※本稿は、李雅卿『天才IT相オードリー・タンの母に聴く、子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
外から見ると「誰からも愛される子」だが…
Q:一人息子の龍龍のことを私はとても大切にしています。なのに、息子は「何もしていないのに、学校でいじめられている」と言います。
息子さんは種子学苑に来て数日のうちに、裁判所(※)の常連になっただけでなく、たくさんの敵を作りました。一方、龍龍自身は「どうしてみんないじわるばかりするんだろう?」と、とても戸惑っています。
※台湾・新北市で1994年に開校した種子学苑には、教師や生徒間のトラブルを学苑の規定に則り解決する裁判制度がある。現在の学校名は種子親子実験国民小学校。
小さな一年生の龍龍。外から見ると、整った顔立ちにきれいな服装、笑顔は愛らしく、頭もよくて体も健康――まさに誰からも愛される子です。ところが、クラスメイトの輪に入ったとたん、龍龍の評価は一気に変化します。他の子の言葉を借りれば、「とても好きになれない」子になるのです。
なぜこんな評価になるのか、いくつか例を挙げれば理解できるかもしれません。
コマを回して遊んでいる友達がいると…
1、教室で十歳の孟孟が中国ゴマ(空中で回転させるコマ)を回して遊んでいました。すると龍龍がやってきて、回転中のコマに手を伸ばしました。孟孟は体をよじって避けようとしますが、龍龍は負けじとコマを追いかけます。嫌がる孟孟が「触らないで!」と言っても、聞く耳を持ちません。
孟孟は学苑の規定に従い、手を止めるよう忠告しましたが、それでも龍龍は全くやめようとしません。とうとう孟孟は大きな声をあげて龍龍を突き飛ばしました。体の小さな龍龍は床に倒されてしまい、大声で泣き始めました。
その後、龍龍は「いじめられた」と言って先生のところにやって来ました。あなたは孟孟があなたのお子さんをいじめたと思いますか?
2、安安が模型のおもちゃを持って、龍龍に「一緒に遊ぼう」と言いました。すると龍龍はそのおもちゃをちらっと見て、「ださい! うちにはもっとすごいのがあるよ」と言いました。
龍龍はその時すでに安安が嫌な気持ちになっていることに気づかなかったのでしょう。そばにいた生徒に「すごいね!」と言われると、「そうだよ! うちには○○があって……」と話し始めました。でも話が終わらないうちに、誰も龍龍を相手にしなくなっていました。