女子ゴルフの堀琴音選手がプロ8年目で初優勝を果たした。『書斎のゴルフ』元編集長の本條強さんは「2018年は開幕戦から34試合中27試合が予選落ちだった。引退が噂されるほど不調に苦しんだが、『ゴルフが好き』という変わらない思いが復活の原動力になった」という――。

どん底から一転、夢にまで見た初優勝

笑顔は一瞬だった。
涙が溢れ出て顔を覆った。

7月11日、北海道の桂ゴルフクラブで行われたニッポンハム・レディスで、堀琴音(25)が初優勝を果たした。

プレーオフを制し、初優勝した堀琴音=2021年7月11日、北海道・桂GC
プレーオフを制し、初優勝した堀琴音=2021年7月11日、北海道・桂GC(写真=時事通信フォト)

アマチュア時代から活躍し、2012年、13年にはナショナルチーム入り。高校卒業後の2014年のプロテストに一発合格するなど将来を嘱望されていたが、近年は低迷。一時は引退もささやかれていたが、プロ8年目にしてついに復活を遂げた。

ニッポンハム・レディスの最終日最終組。首位は一緒に回る若林舞衣子。堀琴音の5歳上の先輩、母となってから何にも動じない強さを発揮している。

7月というのに肌寒い霧雨の中、堀琴音は2打先を行く若林を猛然と追いかけた。

「最終日は勝つことだけを考えてゴルフを楽しみたい。一番を目指して頑張る」

そう語っていた堀はスタートからショットが絶好調。ツアー最長の難コースを強気で攻めていく。1番で2mを沈めてバーディを奪うや、3番でピン80cm、6番で10cmに付けるスーパーショットでバーディ。しかしそんな堀にも若林はまったく動じない。完璧な守りのゴルフを展開、並ばれては突き放し、リードは許さない。

「若林さんに隙はない。ならば自分が攻めるだけ」

堀は後半の14番でバーディを奪って1打差とし、勝負を賭けた15番で5mをぶち込んで3度目の首位タイとなる。2位には5打差、まさに堀と若林の一騎打ちだった。