笹生優花の「勝利」の陰に、畑岡奈紗の「敗北」がある

女子ゴルフの海外メジャー、全米女子オープンで笹生優花(19)が優勝した。2位になったのは畑岡奈紗(22)。2人の日本人選手がサドンデス・プレーオフで勝敗を決するという史上初の展開を、日本のみならず世界各国のゴルフファンが固唾を飲んで見守った。

プレーオフ9番、畑岡のティーショット
写真=AFP/時事通信フォト
6月6日。全米女子オープンのプレーオフ9番、畑岡奈紗のティーショット

19歳11カ月7日で大会を制した笹生は史上最年少優勝。笹生の素晴らしい「勝利」は疑うべくもない。ただ、今回はその陰に隠れる形になった畑岡の「敗北」について紙幅を割きたい。

6月6日。全米女子オープン最終日の終盤、畑岡には勢いがあった。首位から6打差の6位で最終日を迎えた彼女は、終盤に猛追をかけ、ついには首位を捉えて後続組のホールアウトを待った。

一方、首位と1打差で最終日を迎えた笹生は、序盤から2連続ダブルボギーを喫して大きく後退したが、終盤の連続バーディーで巻き返し、畑岡と並んだ。

そして2人はサドンデス・プレーオフへ突入。3ホール目でバーディーパットを沈めた笹生の勝利が決まった。

ジャンボ尾崎「素晴らしい2位であった」

畑岡は敗北を喫しても、メディアの取材にきっちり答える優等生だった。そして、心から勝者を讃えるグッドルーザーでもあった。

「優花ちゃんとはジュニア時代から同じフィールドで戦ってきたので、簡単には勝たせてくれないとは思っていました。優花ちゃんの攻めのプレーも本当に素晴らしかった」

そして、敗北しても、卑屈にはならず、顔を上げ、毅然と胸を張った。

「(首位から)6打差がありましたけど、伸ばせばチャンスはあるのかなと思って、最後まで諦めずにできたのは良かった。6打差ある中でプレーオフに進めたのは良かった。ピンチが続く中でも諦めずにプレーできたのは良かったです」

笹生を指導する尾崎将司は「最大の賛辞を送りたい。素晴らしい2位であった」と敗北した畑岡を讃えた。

その通り、畑岡はよく耐え、よく伸ばし、ネバーギブアップのゴルフを見せてくれた。難コースのオリンピッククラブで4日間をアンダーパーで回り終えたのは、わずか5人。その中でもベストスコアとなる4アンダーで回ったのは、笹生と畑岡だけであり、プレーオフでどちらが勝つか負けるかは、本当に紙一重だった。

ジャンボ尾崎の言葉通り、それは「素晴らしい2位」だった。