12年間、メジャーで勝てない日々を過ごしたミケルソン
しかしながら、勝利を目指すアスリートにとって、やっぱり2位は2位にすぎず、どんなに惜しい負け方であっても、負けは負けなのである。
畑岡には2018年の全米女子プロでも首位と9打差の23位から猛チャージをかけてプレーオフに持ち込み、敗れた苦い経験がある。今回は6打差からの猛追でプレーオフに持ち込み、今回も敗れた。
メジャーに勝ちたい。メジャー・チャンピオンになりたい。その願いがかないそうで、なかなかかなわず、それでも毅然と前を向く畑岡の姿を目にしていると、思い出されるのは、男子ゴルフ界の先人たちのメジャー惜敗のシーンだ。そして、多くの場合、その惜敗の過程には「よりによって」と恨みたくなるようなアンラッキーがあった。
ここでは2人の先人の名前をあげたい。今年の全米プロで優勝したフィル・ミケルソンと、昨年のマスターズを制したダスティン・ジョンソンだ。
かつて「メジャー・タイトル無きグッドプレーヤー」と呼ばれ続けていたミケルソンは、プロ入りから実に12年間、メジャーに勝てない日々を味わい、2004年マスターズでようやくメジャー初制覇を遂げた。
しかし、彼が「一番勝ちたい」と願い続けている全米オープンでは、6度も優勝に王手をかけながら、ことごとく敗れた。
今年の全米プロを制覇して、史上最年長メジャー優勝に
最も印象的だったのはウイングドフットで開催された2006年の全米オープンだ。最終日の18番でミケルソンが打ち放ったドライバーショットは大きく左に飛び出し、「よりによって」コース沿いに立ち並んでいたコーポレート・テントの屋根に当たり、大きく跳ね上がって木々の間の見通しの悪い位置に止まった。そこから無理にグリーン方向を狙った結果、ミケルソンは自滅し、目前だった勝利を逃した。
あの惜敗のビターな味わいは、今でもミケルソンの胸の中に残り続けているという。
だが、苦い経験があった一方で、彼は2004年のマスターズ制覇を皮切りに、次々にメジャー・タイトルを獲得し、今年の全米プロを50歳11カ月で制覇して史上最年長メジャー優勝を達成。メジャー通算6勝目を挙げた。
勝てそうで勝てなかった苦しい時代を乗り越えた先には、素敵な未来が待っている。そう信じれば、苦い敗北も糧になる。