首位に立つ若林舞衣子も3日目、4日目とノーボギーのゴルフだったが、プレーオフ3ホール目で遂にボギーを打ってしまった。堀とのボギー合戦に敗れたことで勝利を逃した。バーディ合戦ならず、ノーボギー合戦が勝負を決する。これこそが昔も今もゴルフの真髄と言っても良いだろう。

試合に出ても出ても予選落ちが続く悪夢の日々を乗り越えた堀。逃げ出したくても逃げ出さず、辞めたくても辞められなかったのは、「ゴルフが好きだったから」に他ならない。好きなことなら苦難も乗り越えていける。人生において好きなことに巡り会うことがどれほど大切かがわかる。

ショットが良くなった堀はゴルフが楽しくて仕方がない。ナイスショットのあと、思わず笑顔が出る。そんなことは丸3年なかったことだった。しかも優勝争いができる。そんなチャンスが巡ってくるだけで嬉しかった。

最高のゴルフ人生は今、ようやく始まったばかり

最終日の序盤は楽しい気持ちが全面に表れた攻撃だった。

女子プロゴルフの堀琴音選手。
スランプを脱出して20歳の頃の笑顔が戻る。写真=大森大祐(書斎のゴルフ)

首位の若林に追いつけども離されたが「どんなことがあっても食らいつこう。最後の最後まで絶対に諦めない。強い気持ちを持って戦おう」と集中力を高め、勇気を持ってピンを目がけた。とはいえ、若林に追いついてプレーオフになってからは、心臓がバクバクしだした。勝ちを意識したからに他ならない。

「緊張が最高潮にまで達してしまって。胸に手を当てて何度も深呼吸しました。ドキドキが少しでもおさまってくれたらと。日頃からやっていたことなので、なんとかなるかなって。でも最後のバーディパットはダフって1mしか飛ばないかと思いました。それでも深呼吸して、2パットのパーでも勝てると言い聞かせて、ようやくピンに寄せて勝つことができました」

緊張が解けた途端に涙がワッと出た。苦労したからこその価値ある初優勝である。楽しさが集中力となり、ソーンに入って実力以上の力を発揮、最後は深呼吸で緊張を抑える。

こうしたマインドコントロールも地獄を見たからこそ可能となった精神力である。パッとツアーに出てきてサッと勝ってしまう新人が多い中、堀の初優勝は自分を鍛え上げた逞しい勝利である。

「少しの悔いもない生き方を。人生を最高に旅せよ」とはドイツの哲学者、ニーチェの言葉だ。堀琴音のゴルフ人生は今ようやく始まったばかり。悔いの残らない最高の人生になる旅が始まったのだ。

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