10月10日、女子ゴルフの渋野日向子選手が約2年ぶりに国内ツアーで優勝した。10月31日には今季2勝目を挙げている。『書斎のゴルフ』元編集長の本條強さんは「2020年は1勝もできず、この2年は世界チャンピオンの重圧に苦しんでいた。だが、日本の女子ゴルフの常識を捨てることで、強いゴルフを取り戻した」という――。
2番、第2打を放つ渋野日向子=2021年10月9日、静岡県裾野市の東名CC
写真=時事通信フォト
2番、第2打を放つ渋野日向子=2021年10月9日、静岡県裾野市の東名CC

「もう二度と勝てないのではないかと思えました」

シブコこと渋野日向子から笑顔が消えて2年近くが経っていた。

プロデビューから2年しか経っていないあどけない女の子が2019年夏、いきなり世界のメジャー大会、AIG全英女子オープンで優勝、一躍スターになった。シンデレラガールの誕生であり、プレー中終始笑顔を見せていたことから海外メディアが「スマイリング・シンデレラ」と書き立てた。帰国後の凱旋試合は空前の人気でシブコタオルは1時間で完売、地上波の放映も高視聴率だった。それ以降もシブコフィーバーは続いていた。

ところが、その2019年の終わり頃からシブコは勝てなくなった。スイングが乱れ始め、ここ一番で左に引っ掛けるミスショットを放って自滅する。

得意のパッティングも入らなくなった。2020年は追い打ちをかけるようにコロナが押し寄せ、海外挑戦も思うようにできなくなり、何とか出場しても結果が出ない。ならば日本で活躍しようとしても調子が上がらない。

しかし、人気選手だけに成績が悪くてもマスコミに追いかけられる。ひどい結果もシブコだけは報じられる。インタビューにも呼ばれるが、弱気なところは見せられない。愛称だけは維持しようと,作り笑いを浮かべる。それが、自嘲にしか見えない。2020年は1勝もできなかった。

「もう二度と勝てないのではないかと思えました」