その一方で、子供への虐待やネグレクト(育児放棄)、放蕩・浪費生活などの要素は、親権獲得において極めて不利に働く。自分の家庭生活に、そのような反省点が見られるなら、すぐに直す必要があるし、裏を返せば、配偶者に児童虐待などの疑いがあるなら、ボイスレコーダーや医師診断書などで証拠に残すことにより、自らが相対的に有利になるというわけだ。
さらに、離婚が迫ってきたなら、相手に子供の身柄を取られないよう、先回りして協力者に預かってもらうことも重要だ。
「世の奥さん方の中には『蒸発作戦』をとって、旦那が仕事に出かけている間に、子供を連れて、荷物もまとめていなくなるという人もいる。裁判官は現実の安定性を重視する傾向にあるので、たとえば母親の実家で子供が数カ月間元気に暮らしてきた事実があれば、母親へ親権が渡りやすくなる」(同)
この「実力行使」作戦は父親も使える。それまでの養育実績が多少危うくても、子供を連れて実家に帰れば、調停、裁判、控訴をする間に実家で1~2年の養育実績ができる。そこで子供が幸せに暮らしているのなら、裁判官もそれをあえて壊して母親に親権を与えるような判決は出しづらくなる。
また、裁判所は、必ずしも子供の現況を正確に把握できるとは限らない。
「いくら泣こうが、わめこうが、裁判所まで悲鳴は聞こえない」(同)
調査官が子供本人を調査せず、紙の証拠と親たちの言い分だけから判断すると「どちらが現在養育しているか」という事実が重くなってしまうというのが、調停・裁判の現実である。
なお、以上はあくまで法律論であり、子供の福祉に反してまで、その身柄を確保することが道義的に許されるわけではない。
「親権を争うより、子供の養育環境を冷静に考えてもらいたい。子供は、親の所有物ではないのだから」(同)