著作権は、急速に「身近」な法律となりつつある。ごく簡単な例を挙げてみよう。ブログで本を紹介する場合、その表紙画像を載せる行為は、著作権の侵害になるのだろうか。
法理論的には、著作権者に無断でネット上に作品を載せる行為は、複製権や公衆送信権の侵害に当たる。損害賠償責任が生じたり、刑事事件として立件されたりする可能性もある。
「引用」だから著作権侵害にならないという人もいるかもしれない。著作権法では、批評などの目的で他人の著作物の一部を引用することが条件付きで認められている。ただ、ブログの批評対象は本の内容であって、表紙ではないから「引用」でないとも捉えうる。著作権などの知的財産領域に詳しい福井健策弁護士(骨董通り法律事務所)は、「これは、白黒の判別が難しいグレーゾーン」と指摘する。つまり、法に触れる可能性があるということだ。では、無断でコピーしたと思われる文章や画像、動画がネットに溢れている現実はどう解釈すればいいのか。
福井弁護士は、「著作権法は、グレーゾーンの幅が広い。法に触れるかどうかを考えるだけではあまり意味がない」と指摘する。それは、著作物という「情報」の本質に由来する。「ある本は、1人で読もうが100人で読もうが、その内容は減らない。また情報は、複製可能で独占管理しづらい。土地なら他人が侵入したらわかるが、著作物はコピーを取られてもわからない。この『非競合性』と『非排除性』により、情報は自由流通の性質を持つ」(福井弁護士)。
しかし、著作者が対価を得るためには作品を管理する必要があるという創作振興の観点から、「自由流通が原則の情報をあえて一部著作物として切り取って、創作者に対して独占管理を一定期間許している」(同)。著作権は絶対ではなく、その時代の社会や市場の状況に応じて変わるものであり、そのことがグレーゾーンの広さにつながっている。
では、冒頭の例のように、自分の行為がグレーゾーンに該当する場合、すべきかどうかの判断はどうすればいいのだろうか。