「変革期の今、著作権法は『考える法律』。自分の頭で考える必要がある。ポイントは2つ。1点目は『その行為で著作権者の懐(=収入機会)を痛めていないか』、2点目は『著作権者の感情を極端に害していないか』だ」(同)。著作権者の収入機会を奪う行為、批評を超えて、著作権者や作品の尊厳を傷つける行為は「黒」に近くなる。
「自分の頭で考える」ことは、企業が著作権ビジネスを進めるうえでも必要になる。たとえば、これから始めるビジネスが著作権に抵触する可能性があるとしよう。コンプライアンス重視の昨今、多くの日本企業は「訴訟リスクがあるならやらない」という結論になりがちだ。
しかし福井弁護士は、リスクを取ることの重要性を指摘する。
「『コンプライアンス』という言葉は、しばしば『少しでも法的リスクがあるものは避ける』という意味に使われているようだ。しかし、グレーゾーンが広い著作権法でわずかなリスクまで避けていたら何もできない。大事なのは『リスク管理』。その事業の意義や収益がリスクを上回るなら、時にはリスクを取るという姿勢も必要だ。たとえば、著作権の問題が指摘されたYouTubeは創業2年で、Googleに16億5000万ドルで売却された。YouTube自体をどう評価するかはさておき、これなら裁判を10本や20本抱えても計算が合ったのも事実」(同)
著作権者との係争を抱えつつ、全文検索などのビジネスを進めるGoogleやamazonなどの米国企業に対し、コンテンツビジネスではほとんど存在感を示せない日本企業。この差は、グレーゾーンにあえて踏み込むしたたかさを持てるかどうかの違いが一因なのかもしれない。
(ライヴ・アート= 図版作成)