「耳の可処分時間」というブルーオーシャン

音声メディアを試してみると、「声」には、確かに動画のときでは感じられない魅力があるのがわかる。では、メディアとしての「声」にはどんな特徴があるのだろうか。

まず、音声を聞く「耳」の可処分時間が長いことが挙げられる。人の持つ1日の時間は、睡眠時間を除くと15~16時間ほどだろう。

「目」の場合、起きている間のその可処分時間を奪い合うライバルが多い。スマホ、ゲーム、テレビ、マンガ、本などのメディアのほか、仕事や家事、勉強、歩行中など、視覚が絶対に必要な行動は多い。可処分時間を奪い合う市場として、「目」はレッドオーシャンといえるだろう。

それに引き換え「耳」は、注視が必要な「目」とは違い、集中して聞くことが必要ない「ながら聞き」が中心だ。スマホでSNSをしながら、ゲームをしながら、家事や勉強をしながら、歩きながら、などほとんどのことが可能で、可処分時間は目よりはるかに長い。

起きている間、耳から音声を流しっぱなしにすることさえできる。リスナーとしても、「耳」を利用したい側からしても、市場としての「耳」は、まだブルーオーシャンといえる。

ワイヤレスイヤホンを手にする女性
写真=iStock.com/Mariia Kokorina
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10分しゃべるだけで「そのままコンテンツ」

堀江貴文さんを中心に運営されている「ZATSUDAN」という音声メディアがある。各分野のプロフェッショナルが雑談をし、それがそのままコンテンツになるという音声配信プラットフォームだ。

筆者はこれまで何回もZATSUDANに参加したが、動画とは違い、顔出しが不要なので、場所や身なりを気にする必要がなく、移動中ですら配信できるという気軽さを感じた。

またClubhouseにも共通するところだが、雑談中にゲストが飛び入りで参加したり、リスナーからの質問がインタラクティブに来たりして、そこから新しいアイデアが生まれることもあった。そうした気軽さとインタラクティブ感は、Twitterに近いと感じた。

Voicy創業者の緒方さんも、音声メディアの魅力はその気軽さにあるとしている。Voicyではあえて編集や加工をできない仕様にしており、10分しゃべればそれがそのまま10分のコンテンツになる。

緒方さんは「世の中に発信するメディアの中で、最も低労力、低コストでできるところがVoicyのメリットだ」と話す。そして、「Voicyはどんなに忙しい人でもちょっとの隙間時間で配信できる。忙しくて魅力的な人ほどそれが刺さる」という。

準備時間がほとんどかからず、気軽に配信できるから、忙しい著名人でも配信しやすいというのだ。