2017年末にあった「6000億円増資」の異例さ

東芝の株主は、6月25日の定期株主総会で永山治取締役会議長の再任を否決した。取締役会議長の再任が否決されるのは、極めて異例だ。

記者会見する東芝の綱川智社長(右)と永山治取締役会議長
写真=時事通信フォト
記者会見する東芝の永山治取締役会議長(左)と綱川智社長(右)=2021年4月14日

東芝の社内からは「自分たちの意をくんでくれる最後の支え」とする声が聞かれていたが、投資ファンドなどを中心とする海外投資家の要求が通った。

経営破綻の懸念もあった会計不正から6年。ようやく再建への希望が見えかけた中での混乱に、社内からはあきらめのような声も聞かれる。

今回のドタバタ劇の発端は、東芝が2017年末に実施した6000億円の増資だ。このとき、引受先として資金を供給したのが、今回の株主総会で永山氏らに「退場」を突き付けた物言う株主=アクティビストだった。東芝の幹部は「アクティビストを大株主として招かざるを得なかったことを考えれば、いつか経営陣と衝突する芽は内包されていた」と振り返る。

※編集部註:初出時、東芝の株主構成についての表記に誤りがありました。また、増資の背景について誤解を招く表現がありました。訂正します。(7月3日9時30分追記)

車谷社長の信任票は99%から57%にまで低下

シンガポールの投資ファンドであるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントや米ファラロン・キャピタル・マネジメントらは、投資の見返りとして自社株買いによる株価引き上げや高額な配当を要求してきた。当初はこうしたアクティビストの声に車谷氏も応えてきた。

しかし、昨年9月、東芝の株主総会の運営に疑義があるとして、エフィッシモが調査を要求、これを車谷氏ら東芝の首脳陣が無視したころから両者の関係は一気に険悪となる。

昨年7月の総会では車谷氏の信任票はその前の年の99%から一気に57%にまで低下、このころから車谷氏はエフィッシモらアクティビストの動向に神経をとがらせるようになった。

再建途上の東芝にとって、高額な配当を要求し、自ら推薦する人物を経営陣に送り込むこれらアクティビストの存在は目障りだったことは想像に難くない。そこで車谷氏らはMBO(経営陣が参加する買収)で非上場化することでエフィッシモらの影響力をそぐことを計画したとみられている。資金の引受先は、車谷氏が日本法人会長として籍を置いていた英CVCキャピタル・パートナーズである。