経産省の画策で、海外からの信用を一気に失う恐れ
半導体不足は日本の自動車メーカーにも打撃を与えていることから、経産省らは、台湾の半導体受託製造大手TSMCの国内誘致を進めている。供給力不足の解消に加え、弱体化する半導体産業のテコ入れを目指すが、「新たに半導体を設計・開発する力はすでに日本にはなく、せいぜい半導体製造装置や材料メーカーが潤うだけ」との冷めた見方が多い。
経産省の主導する政策はどこか腰が引けている。東芝のある幹部は、「2~3年ごとに幹部が入れ替わるため、長期的な視点で企業経営に取り組める役人はいない」という。一方、経産省の担当者からすれば「先々の出世を考えれば、任期中はリスクを取らずに無難にやり過ごすほうが得策だ」という本音がある。
自らの保身のため、法律を盾に、経産省らに頼る東芝の姿勢は批判されてしかるべきだが、日本の企業にコーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)の順守を説いてきた張本人が経産省だ。外為法の改正は当初、「恣意的な運用などにより海外投資家の日本離れを加速する恐れがある」という指摘があった。案の定、今回の一件で海外からの信用を一気に失う恐れがある。
改正外為法の趣旨や運用について、梶山弘志経産相や菅義偉首相がしっかり説明する必要がある。それができなければ、今度は市場からの信用失墜という重いペナルティーが、日本企業全体に科されることになる。