「下ネタ」を話してくる人にはどう応じるのがいいのか。イラストレーターの辛酸なめ子さんは「完全無視すると気まずくなってしまう。相手の発言を受け止めながら、多数の意見の一つとして、罪悪感を薄めつつ、さりげなくなかったことにするのがいい」という――。

※本稿は、辛酸なめ子『新・人間関係のルール』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

バーカウンターに立つビジネスマン
写真=iStock.com/Viktoriia Hnatiuk
※写真はイメージです

あられもないことを言ってくる旧態おじさん

「どう、最近セックスは」

と、えげつない言葉を挨拶代わりに浴びせてくる業界人男性がいます。

パーティか何かの席でした。私はそれには答えずスルーすると「最近のMeTooって何あれ、嫌だよね」となぜか同意を求められたので「私にとってMeTooは◯◯さんですから」とその人に言って、その場を離れました。

一昔前は、こんな下ネタが苦笑されつつも受け入れられていましたが、時代は変わりコンプライアンス遵守な現代では、ハラスメント系は許されない風潮です。若い世代は下ネタを言ってくる人などほとんどいませんが、旧態おじさんの中にはあられもないことを言ってくる人がいて油断できません。

何も行為がなくても、言葉で汚されたという思いは、女性の心に根深く刻印されてしまいます。楽しい思い出はすぐ忘れても、卑猥な下ネタを言われた思い出は何十年も残っているのが不思議です。女性同士で下ネタトークをするぶんには楽しいのですが……。

下ネタだったり下心だったり、男性の下半身からくる下エネルギーをどのようにかわせば良いのでしょうか。

「下ネタには下ネタで応戦」はもう古い

私が昔やっていたのは、下ネタには下ネタで応戦するという方法です。相手が女体についてトークしていたら、さらにもっとえげつない表現でかぶせていく……。

例えば乳首の話をしていたら乳輪について話したり、乱交の話題には獣姦の話でマウンティングしたり。そして男性が引いていく、という流れです。

自分の中のインナー中学生男子を呼び出すイメージです。20代~30代前半くらいまで、あられもなく下ネタを言っていましたが、さすがにいい大人になったのと、世の中の風潮に合わせて今は封印する方向に……。

また、下エネルギーに対してはスキを見せない、というのはいうまでもなく重要なことです。そのような空気になると、私の場合、女教師モードになります。母が教師だったので、その遺伝子を呼び覚ましつつ、中高の女性教師の話し方を踏襲します。

誰にも思い出の中高の女性教師がいると思います。性を感じさせず、享楽的なこととは無縁そうな、まじめで地道で厳しい女性教師。その女教師のハキハキした喋り方で、下ネタや下心に対応するのです。

とにかくハキハキと「はい! はい!」などとあいづちを打ったりすれば、まったりした下エネルギーをかき消せます。