企業DNAのように根付く、インダストリアルデザインへのこだわり

以上を踏まえて、あらためて「アップルカー」の戦略に私が分析を加えるならば、次の6点にまとめることができます。

アップルストア
写真=iStock.com/prachanart
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(1)単なる「EV」ではなく「EV×自動運転車」を目指す

アップルカーは単なるEVではなく、自動運転車であることが明らかになりました。また、CASEのS(サービス)においては、サブスクリプションモデルを併用して展開してくる可能性が高いと見ます。

(2)インダストリアルデザインの細部にまでこだわる

iPhoneに限らず、アップルの製品にはもれなく、故スティーブ・ジョブズのインダストリアルデザインに対する哲学、想い、こだわりが込められています。グーグルやアマゾンほど具体的なミッションやビジョンを掲げていないアップルですが、インダストリアルデザインに対するこだわりはアップルの企業DNAのように根強く息づいています。

事業構造を見ても、ハード、ソフト、コンテンツ、クラウドなど広範な事業領域をカバーしつつも、主な売上はiPhoneによるものです。その意味でアップルは典型的な「ものづくり」の会社であり、やはりメーカーなのです。

であるならば当然、アップルカーにおいてもiPhone同様のインダストリアルデザインを追求してくるはずです。外部委託による水平分業としながらも、自社工場なみに生産管理を徹底し、細部までデザインにこだわりぬいたプロダクトを発表してくるでしょうし、ユーザーもまたそれを期待しています。

車でも「新しいライフスタイル」を提供するはずだ

(3)「製品」のみならず「エコシステム」にこだわる

アップルはものづくりの会社ですが、これまで論じたとおり、アップルがハードとしての車を提供するだけにとどまることもないはずです。iPhoneがiOSやアプリ販売のアップストア、音楽配信のアップルミュージックなど各種のサービスからなるエコシステムの中心に位置しているように、「アップルカー」では、スマートカーを中心に置いた新しい生活サービスのエコシステムを構築してくるに違いありません。

(4)「自分らしく生きる」ライフスタイルブランドとしての車

アップルは、製品を通じて「新しいライフスタイル」を提案することで、熱狂的なファンを生み出してきたブランドでもあることを忘れるわけにはいきません。例えば携帯音楽プレイヤーのiPod。音楽データ配信サービス「iTunes」と併せて提供することで、音楽=CDで聴くものから、音楽=データ配信で聴くものに刷新し、「いつでもどこでも、聴きたい音楽を買い、聴ける」という新しいライフスタイルを提案しました。

またテレビCMでは「Thinkdifferent」というメッセージを打ち出し、「自分らしく生きる」人々を後押ししてきたアップルです。アップルカーもまた単なる車というより、ライフスタイルブランドとして提供してくるはず。そこに込められた信念や価値観に共感するユーザーが、アップルカーのユーザーになるのです。