「あなたの未来を強くする」。住友生命は10年間、このブランドメッセージをずっと使い続けている。その狙いはどこにあるのか。この4月に戦後10代目の社長に就任した高田幸徳新社長に、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。(前編/全2回)

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「住友生命新社長 高田幸徳氏×立教大学ビジネススクール 田中道昭教授対談」(4月1日、4月8日公開)を再編集したものです。

住友生命の高田幸徳社長(左)、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授(右)
住友生命の高田幸徳社長(左)、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授(右)

新入社員へのメッセージ「4つのシン」の意味

【田中】社長就任おめでとうございます。今日は入社式でした(編註:取材は4月1日に実施した)。新入社員のみなさんにはどのようなメッセージを送られたのですか。

【高田】みなさんには4つの「シン」についてお話ししました。まずは保険会社の原点である信用信頼の「信」。それから自分の価値や今あるものを深めていくという意味での「深」。次に、新しいものにチャレンジする「新」。そして最後が「進」です。住友生命の社是に「進取不屈の精神」がありますが、「進取」=「進んで取っていく」というスピリットを持ってほしい。それらの思いを込めて、4つの「シン」を実現する職員になってほしいとメッセージを送りました。

また、4月1日は、多くの新入社員にとって、社会人になった初めての日、つまり“Day 1”です。これから人生を歩む中で、今どのような気持ちで自分はこの会社に入ったのかという原点を、常に覚えておいてほしいというお話もしました。

いまは日本企業が変わる大きなターニングポイント

【田中】高田社長の社会人としての“Day 1”は1988年4月1日でした。三菱UFJ銀行の半沢淳一新頭取も88年入社です。金融業界が一気に若返りましたね。

【高田】私たちはいわゆるバブル世代で、入社当時の世の中はイケイケドンドンでした。ただ、そこが頂点で、以降は失われた何十年という時代を経験しました。そして今、平成不況を抜けて世の中が少し良くなってきたところで、コロナ禍という想像し得ないことが起きました。この一年は一人間、一地球人としてどうあるべきかを考えさせられた一年でした。そのようなタイミングで同世代が経営に参画していくのは興味深いこと。日本企業が変わる大きなターニングポイントになる気がしています。

【田中】今日が社長としての“Day 1”です。社長の仕事は何だとお考えですか。

【高田】住友生命は指名委員会等設置会社で、社外取締役等で構成している指名委員会が社長を選ぶ仕組みです。選任にあたって、候補者は約一年前から自分の経営観などをプレゼンしてきました。私はまさか自分がやるとは思っていなかったので、自分がやりたいことを気楽に話していました。具体的に社長の仕事として挙げたのは、「長期的な経営方針の明示」「決断」「人材育成」の3つです。宣言した以上は、実現していきます。