この4月、70歳までの就業機会の確保を企業に求める「改正高年齢者雇用安定法」が施行された。日本人は何歳まで働かなければいけないのか。元日銀理事の山本謙三さんは「70歳定年を論じる時期はとうに過ぎた。いまは定年制の廃止を議論すべき時だ」という――。
「いまは定年制の廃止を議論すべきときだ」
本年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行された。70歳まで働く機会の確保を企業に求めるものだが、あくまで努力義務にとどまる。厚生労働省も、ホームページで「定年の70歳への引き上げを義務付けるものではありません」と、わざわざ赤字で強調しているほどだ。
なんとも、煮え切らない。将来の人口動態を踏まえれば、70歳定年を論じる時期はとうに過ぎた。いまは定年制の廃止を議論すべき時である。一人ひとりができる限り70歳代半ばまで働く社会にしていかなければ、若い世代の負担ばかりが増える。このままでは、日本の社会がもたない。
見当たらない3つ目の人口の塊
図表1は、いわゆる人口ピラミッド――男女別・年齢階層別の人口構成である。左図が2015年の実績、右図が2065年の将来推計である。
左図の15年のピラミッドには、2つの大きな人口の塊がある。団塊世代と団塊ジュニア世代だ。いまは、団塊世代のなかから他界者が増え、両世代の人口が徐々に拮抗に向かいつつあるところだ。
このピラミッドの本当の特徴は、3つ目の人口の塊が見当たらないことにある。本来出生率が高く維持されていれば、団塊ジュニア世代の子どもたちが、次の人口の塊をつくっていたはずだった。左図でいえば、10歳代半ばから後半の層にあたる。しかし、そうはならなかった。出生率が低下傾向を続けたからだ。