社会人デビューする若者は20代をどのように生きるべきなのか。作家の本田健氏は「“社会のヒエラルキー”を知らずにボーっとしていると、自分の可能性を見つけぬまま人生を送ることになる。社会の構造や働き方・生き方の選択肢を十分に知ったうえで、自分が社会とどう関わりたいのかを考えるべき」という――。

※本稿は、本田健『20代にとって大切な17のこと』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

牛丼とフランス料理
写真=iStock.com/kesuken、Ryzhkov
※写真はイメージです

あなたは「社会の仕組み」を本当にわかっているか

小学校の社会科では、「どんな仕事も尊い」と習いました。

一方で、一昔前の人生ゲームなんかをやると、サラリーマンコース、医者コース、実業家コースとかがあって、どの仕事をするかで、だいぶ人生が違ってくることがわかります。

小学生の頃、クラスメートと話しているだけで、その子の家がお金持ちか、普通か、お金に恵まれていないか、だいたい想像できたと思います。同時に、自分の家の経済状態、社会的ステータスについても、小学校高学年になると理解するようになったでしょう。友達の家に行って、見たこともないような高そうなものがあるのを見て、「この子はお金持ちなんだ。うちとは違う……」と思ったことがありませんでしたか?

僕が小学生のとき、友達の家に行ったら、ホームエレベーターがあって、びっくりしたことがありました。それまで、エレベーターという機械は、オフィスビルとか百貨店に設置されているもので、個人の家にあるとは、想像したこともなかったのです。

逆に、友達が遊びに来たときに、うちがセントラルヒーティングで、スイッチを押すだけでヒーターから温風が吹き出すのを見て、「おまえのウチは金持ちだ。俺の家とは違う」と言われたことがありました。当時、日本の暖房は灯油ストーブが主流で、セントラルヒーティングになっている家はめずらしかったのです。生まれたときからそれがあって、そんなもんだと思っていたので、逆にびっくりしたことを覚えています。

牛丼を5分で食べる人、高級フレンチを2時間かけて食べる人

そんな友人とのちょっとしたやりとりで、自分の家の経済状態や社会的地位がだいたいわかってくるものです。小学校高学年にもなれば、自分の両親が、上流、中流、下流のどこに属しているかを認識できたでしょう。

そして自分の進路を考えるときも、「自分は頭がいいわけではないから、普通のサラリーマンになる」と考えたり、「親が医者だから、自分も医者になる」と考えたりします。やる気のある人は「絶対に金持ちになってやる!」と思ったりしたでしょう。

親と自分は直接関係ないはずなのに、自分の社会的位置も、「これくらいかな」と考えるようになります。家の経済的な現実を見ると、自分の選択肢も見えてきます。

進路を考えるときに、「お金がないので大学には行けない」「私立の大学は無理」とか「留学はできない」といったことを考慮するようになったでしょう。

高校生にもなると、ドラマなどで、社会の構造がどうなっているかに意識がいくようになります。たとえば、たいていの会社員は、チェーンレストランで、500円のカレーか牛丼を5分で流し込むようにして食べています。一方で、同じ時間に高級ホテルの40階の見晴らしのいいフレンチレストランで、5000円のランチを2時間かけて食べるお金持ちもいる、といった社会の現実を知るようになるのです。