平昌五輪後、プーチン大統領はロシア人メダリストをクレムリンに招いて勲章を授与したが、式典終了後、大統領とザギトワさんが2人で話し込むシーンがあった。ロシアの一部メディアによれば、ザギトワさんは大統領に秋田犬の飼い方を尋ねていたという。
プーチン大統領が飼っているゆめはここ5年ほどメディアの前に姿を見せていない。それでも「秋田犬は、外見はかわいくても真剣な犬だ。常に尊敬の念を持って当たらねばならない」「ゆめはいつも私を守ってくれる。番犬のようだ」と述べたことがあり、秋田犬に一家言を持つ。
大統領とフィギュアスケートのスーパースターが、秋田犬談義をする時代になったのである。
「Akita」として国際化するか
秋田犬はロシアだけでなく、世界的に人気を呼び、欧州や中南米、中国や台湾のほか、近年は中東諸国の富裕層も好んで飼い始めた。
昨年末のロイター電によると、新型コロナ禍による巣ごもり需要で空前のペットブームが世界的に起きており、各国で犬や猫の価格が高騰している。社会的ストレスが犬や猫への愛着を高めており、忠誠心が売りの秋田犬は一段と人気を呼びそうだ。
海外の秋田犬人気はブーメラン効果を持ち、忠犬ハチ公の故郷、秋田県大館市はJR大館駅前に観光交流施設「秋田犬の里」を2019年春にオープンした。
秋田犬の歴史や生態を紹介する小型ミュージアムで、血統書付きの秋田犬に会うことができる。新型コロナ禍までの8カ月で30万人の来場者を記録し、秋田県北部の新しい観光拠点となった。
この「秋田犬の里」がロケ地となった日露合作映画『ハチとパルマの物語』(アレクサンドル・ドモガロフ監督)が5月に日本で公開される。
作品は、ソ連時代の実話を基にしており、モスクワの空港に取り残されたシェパード犬のパルマと、孤独な少年の交流を描く。秋田犬も登場し、秋田県出身でタレントの壇蜜さんらが出演している。ロシアでは3月に上映が始まり、週末の観客動員数はトップだった。
こうして、秋田犬人気はロシアで広がり、世界に拡散しつつある。柔道が「Judo」として国際化したように、秋田犬も「Akita」として国際化し、日本の手を離れるかもしれない。