現代アートに興味をもったきっかけは三島由紀夫
私がアートに興味をもったルーツは、文学作品を読むのに没頭した子ども時代にさかのぼります。小学生の頃から両親の勧めもあり、さまざまな文学作品を読んでいたのですが、なぜか三島由紀夫の作品に妙に惹かれました。ここから、寺山修司のシュールレアリズム演劇など、文学を超えて興味の幅が広がり、やがて現代アートに興味をもつようになったのです。さまざまな思いを持ちながら現代アートに取り組む人たちと知り合ううちに、ますますアートが好きになっていきました。「こういった人たちが増えると、もっと面白い世の中になる」という確信をもったことが、今のアートコミュニケーターとしての活動につながっています。
ご存じの方も多いでしょうが、私をアートの世界に導いてくれた三島由紀夫は、1970年に自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げました。その背景についてはさまざまな解釈がなされていますが、私なりに思うのは、彼は彼自身の確固たる価値観に苦しめられていたのではないか、ということです。「男とはこうあるべき」「国家とはこうあるべき」といった価値観と現実のギャップに苦しんでいたように思われます。
ただ、見方を変えれば、ああいった確固たる価値観をもち続けたことが三島の作品の源泉だったのかもしれません。そう考えると、彼自身を含め、もっとさまざまな価値観を許容できる社会が実現していたなら、もっとたくさんの素晴らしい作品が生まれていたような気がします。