ビジネスに新たな発想を生み、価値を実装していくものとして「アート思考」が注目されているが、それを身につけるには何から始めればいいだろうか。医師でありアートコミュニケーターとして活動する和佐野有紀氏に、気軽にアートと親しみ、自分自身の糧にするためのすべを聞いた。
和佐野有紀さん
撮影=西田香織
和佐野有紀さん

実は、現代アートは理解しやすい

前回「なぜ現代アートは、ビジネスに活きると断言できるのか」では、アートに触れることで、ビジネスに活きる多様な視点を得られるという主旨でお話しました。昨今よく耳にする「アート思考」という言葉に明確な定義はありませんが、私は、ある意味限定的な既存の思考の枠を超える存在としてアート思考を捉えています。アート思考を身につけるには、難しいことを考えずにまずはアートに触れてみることが大事ですが、何から始めたらいいのか分からないという方も多いでしょう。

とくに、フランスのモネやオランダのフェルメールなどの教科書的な作品と比べて、現代アートはとっつきにくいとされがちですが、私は現代アートのほうが理解しやすいと考えています。自分と同じ時代を生きるアーティストの作品だからこそ、今の時代の空気が反映された作品の背景にある文脈についても、リアリティをもって捉えることができる。そのため、実は深く作品を理解することができるのです。

電通美術回路『アート・イン・ビジネス』(有斐閣)
電通美術回路『アート・イン・ビジネス』(有斐閣)

もちろん、現代アートの作品には、何を表現しているのか容易に説明しづらいものも少なくありませんが、無理に言語化しようとする必要はありません。

世界的なキュレーターとして知られるハンス・ウルリッヒ・オブリスト氏が、2020年1月に東京藝術大学で行った講義では、「アートは失敗しても安全な唯一の場所」であると言っていました。アートの世界では人と見方が違っても互いを許容する前提が共有されているため、決して戦争にはならない、と。アーティストは、万人に100%理解されようとして作品を生み出しているわけではないので、観た人が感じ取ったものは、ある意味全てが正解。とにかく気軽に肩の力を抜いて現代アートを鑑賞していただければと思います。

Art Thinking

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