世界の美術品市場は7兆円を超え、日本においても市場規模の拡大が続いている。ときに億単位で取引されるアートがニュースに取り上げられることもあるが、なぜアートにそれだけの価値が生まれるのだろうか。『アート思考』の著者である秋元雄史氏が、アートの価値についてさまざまな視点から語る。
ニューヨーク
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前澤友作氏がバスキアの作品に投じた金額

2017年に、ジャン=ミッシェル・バスキアによるペインティング作品が約123億円で落札されたことが話題になりました。落札したのは、当時ZOZOTOWNを運営する企業の経営者であった前澤友作氏です。

なぜひとつのアート作品にこれだけの値がついたのでしょうか? バスキアの作品は、ごくシンプルに言ってしまえば「落書き」です。70年代、80年代の治安の悪いスラム街の壁に描かれていたグラフィティ・アートをアイデアにした作品ですから、100億円を超える値がつく理由が分からないという方もいらっしゃるでしょう。

アートの価値を理解する際に必要なのは、「使用価値」と「交換価値」の概念を理解することです。「使用価値」とは、商品そのものが日常生活の中で使われることによって生まれる価値のこと、「交換価値」とは、その商品を他の商品と交換するときの価値のことで、相手がその商品にどれだけの価値を見いだしているかにより変化するものです。

この2つの概念からアートを考えると、使用価値はほとんどありません。中には実際に使える工芸品などもありますが、多くの場合は飾って楽しむくらいの「使用価値」しかない。しかし、作品に込められた作者の思いや哲学が、人々から「価値がある」、つまり芸術として認められれば、アート作品はその希少性ゆえに「交換価値」がぐっと高くなります。

バスキアの作品についた123億円は、交換価値が時代の経過のなかで高まった結果です。バスキアに限らず、考えられないような高値がつくアーティストが誕生することは時々あり、購入した作品が、数年後に数倍、数十倍の値がつくこともあり得ます。アートこそ、ある意味で究極の高付加価値商品なのです。

Art Thinking

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