今、「アートを取り入れる」という考えが、教育の分野だけでなくビジネスにおいても注目されている。でも、どのような意味でアートがビジネスと関係しているのか。アートマネジメント分野で前期博士号を取得し、現役の医師であり、アートコミュニケーターとしても積極的に活動を展開する和佐野有紀氏に聞いた。
和佐野有紀さん
撮影=西田香織
和佐野有紀さん

アートもビジネスも“生きる態度”である

私は都内の病院で医師として勤務しながら、アートをとりまくコミュニケーションに関する研究や活動を行っています。原宿を拠点に「PROJECT501」というアートプロジェクトを主催し、2019年には電通美術回路のメンバーとして、『アート・イン・ビジネス』(有斐閣)を出版しました。

『アート・イン・ビジネス』は、ビジネスにアートを取り入れることの意味や方法、事例などを解説しており、「アートはビジネスに効くのか?」という問いに対して、ブランディングや組織活性化、ヴィジョン構想など複数の視点からの考察を提示しています。

一般的に、アートとビジネスは、あまり関係のないものとして思われているかもしれません。でも、「アート」を、絵画や彫刻といった作品のみではなく、“生きる態度”として広く捉えると、実はビジネスと共通する要素が多く見受けられます。

電通美術回路『アート・イン・ビジネス』(有斐閣)
電通美術回路『アート・イン・ビジネス』(有斐閣)

世の中の事象をインプットし、感じたことを何らかの形でアウトプットする。そうして、アウトプットを他者と共有する――。これが、アートがたどる基本的なプロセスであり、家の中でひたすら何かを考えているだけではアートは完結しません。

絵や彫刻、写真などアウトプットの方法はいろいろあるとして、プロセスに注目してアートを捉えると、ビジネスとの共通項が浮かび上がってきます。内的衝動や問題意識を、商品やサービスといったアウトプットにして、顧客に届ける――。このようにビジネスを捉えると、アートと共通する要素は決して少なくありません。

実際、私が「この人の生き方はアート」と刺激をいただく方の中には、「スープのある一日」というコンセプトからSoup Stock Tokyoを創業した遠山正道氏など、ビジネスパーソンの方が数多くおられます。

Art Thinking

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