アートで得たメタ認知が、豊かな人生につながる
社会の変化が激しい今、人から「正しい」と言われたことだけを行っていても幸せになれるとは限りません。2020年から人類が直面しているコロナ禍(covid-19)で、個人としてサバイブする力の重要性が高まっているように感じます。もちろんコミュニティも大切ですが、コミュニティに属するにしても、その前に個人として考え方が確立していたほうがいいと思います。
自分でどう生きるのかを考えること、目の前の現実に意味づけすることは、人が豊かな人生を送るうえでとても大事なことです。これは医療現場で感じることですが、高齢でも好奇心があって前向きな方は、「この人は治る」と思わせるパワーをもっています。また、そうした方が実際に病を克服されるような場面を何度も目にしてきました。
「自分の幸せはこれ」と解をひとつに決めてしまうと、その要素が崩れたとたんに不幸に感じてしまう。でも、困難に陥ったとしても、その現実のなかで自分なりの幸せを見つけることができる人は、不幸にはなりません。たとえば両親の死に直面したときに、悲しむだけでなく、時間軸を長く捉え両親の生きた時間に意味づけを行うことができれば、育ててくれたことへの感謝の気持ちが生まれ、自分が生きていく力になるかもしれません。
多くのアートを鑑賞して、多様な見方が身につくと、いわゆるメタ認知の力が高まります。これが困難を乗り越えられるレジリエンス能力を高め、人生をより豊かにしてくれるのではないかと考えています。
(構成=小林義崇)