最近よく見聞きする“HSP(Highly Sensitive Person)”。繊細さんとも呼ばれて感受性の強い人を指しますが、病気ではないので治療法はありません。しかし精神科医の井上智介先生は、HSPかもしれないと思ったら病院を受診する意義はあると語ります。その理由とは——。
感情の共鳴を強く感じるのがHSPの特徴
HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字をとったもので、もともとはアーロン博士というアメリカの心理学者が提唱した、ひとつの気質の概念です。
HSPの人は、ささいな刺激をすぐに察知して、敏感に反応します。つまり“多感”で情動伝染しやすい人。情動伝染とは、音叉が振動して共鳴し合うように、人から人に感情がうつるという現象です。たとえば、別に面白くなくても、まわりが笑っていたら笑ってしまうといったこと。赤ちゃんもわかっていないのに、こっちが笑っていると笑いだすということがありますよね。あくびがうつるのも、情動伝染のひとつです。そういう共鳴を強く感じるのが、HSPの人の特徴です。
誰かが怒られると自分も怒られた気分に
ですからHSPの人は職場でも家庭でも、相手の表情がすっと曇ったり、不機嫌になったりした瞬間を見逃しません。ある意味、空気が読めすぎるので、相手が不快な思いをしないように、いつも先回りして気を遣います。相手からすると、すごくいい人ですが、本人からすると疲れ切ってしまいます。
また共感性が高いゆえに、誰かがイライラしていると、自分もイライラしてきたり、そばで怒られている人がいたら、自分も怒られているように感じたりといったことが起こります。最近はメディアでもよく取り上げられることから、自分もHSPではないかと相談に見える方がけっこういますね。