HSPに治療法はないが、背景に病気が隠れていることも

訴えとしては「空気を読みすぎて自分の意見が言えず、我慢ばっかりでしんどい」「怒られている人を見たら、自分が怒られているようで、苦しくて過呼吸のようになってしまう」……。HSP自体は、生まれ持った気質であり、病気ではないので、治療法はありません。

治療法がないとはいえ僕は、自分がHSPかなと思ったら病院に行く意義はあると思っています。というのはHSPの背景に、発達障害や不安障害といった病気が隠れていることがありますし、幼少期に親から受けた心の傷を抱えている人もいますから。病院に一度行ってみると、もしかすると何か見つかるかもしれません。

診断で何もなくて、それはHSPの特徴だね、となったら、どうすれば生きやすくなるかということを一緒に考えていくことになります。僕からのアドバイスとしては3つあります。

ヘルスケア
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HSPの人が生きやすくなるコツ

(1)物理的な距離をとる

HSPの人は共感力が強いので、できるだけ周囲からの刺激を受け取らないようにすることが大事。そのためには、パーソナルスペース(人と快適に接する距離)を広くとること。相手が近寄ってきたら半歩下がったり、体の向きをひねって真正面にならないようにしたりします。イスに座るときも、距離をとったり、深く腰かけたりして物理的な距離をとりましょう。精神科のイスも基本的に90度で座ることが多いですが、HSPの人は、ふだんからジグザグに座るなど、真正面に座らない、パーソナルスペースに入って来られない工夫が必要になります。

(2)心理的な距離をとる

受け取る刺激を抑えるには、物理的な距離だけでなく、心理的な距離もとりましょう。たとえば職場で、向かいの人と机を挟んでいるなら、机の上にペンケースやコップなどを置いて、そこからこっちは自分の領域、向こうは相手の領域と分けて、何でもかんでも刺激が入ってくるのを避けます。また胸ポケットのペンやネックレス、社員カードを境界線にして、その場の雰囲気や空気に飲まれそうになったら、そこの部分で止めておく、ということを決めておくのもいいですね。

最近はコロナ禍の影響で、飛沫防止のアクリル板がよく使われていますが、アクリル板自体をバリアに見立てたり、目の前に相手がいてもスマホでWEB会議をしている感覚で見たり、そういった心の距離をうまくとれば、その場の雰囲気や空気に飲まれることもなく、自分のペースを守れます。