人間の心理と認知をハックする

あなたはだんだん眠くなる……。催眠術師に操られ、超常的な体験をする。自身も「半信半疑で催眠術と出合った」と語る漆原正貴氏。東京大学大学院で認知科学を修めた同氏の著書は、催眠術の怪しげな印象を覆す、科学的な根拠に根ざした入門書だ。

「催眠は単なる思い込みではなく、生理的な指標までも変化します」。体が温かくなる催眠をかけるとサーモグラフィでわかるほど体温が上がり、心を落ち着ける催眠をかけると心拍数が下がる。医療現場の緩和ケアやスポーツ選手のメンタルトレーニングにも応用されているという。

催眠は日常生活やビジネスシーンでも活用できる。自分に催眠をかければ、集中力を高めたり緊張をほぐしたりと、メンタルを望む状態に近づけられるそうだ。

催眠のかけ方を学ぶことで、コミュニケーションや商談のスキル向上も期待できる。

「催眠術は短い時間で信頼関係を築き、ハードルの高い要求を叶えてもらうための技術です。普通は、赤の他人に心や体の自由を委ねるなんて嫌なはずですよね。それで、相手に気持ちよく話を聞いてもらいながら要求を通すことができるのです」