仕事で攻撃的な人に出会ったら、どうすればいいのか。作家の佐藤優氏は「私は基本的には『はい、わかりました』と答える。決して言い返してはいけない」という――。

※本稿は、佐藤優『見抜く力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

両脇で怒っている男性に注意を向けず瞑想する社員の女性
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「攻撃的な人」には2つのタイプがある

危機の時代を生き抜くためにも、まず大切なのが、人を見抜く力です。

嫌いな相手や苦手な相手とも、付き合わざるを得ないのがビジネスです。中でも面倒なのは、攻撃的な態度を取ってくる人です。すぐ怒鳴ったり威圧的になる人を前にすると、つい臆したり気圧けおされてしまうものです。

攻撃的な人には、2つのタイプがあります。ひとつは、瞬間湯沸かし器型の人。もうひとつが、戦略的な観点に立っている人です。

前者は自身の脳内分泌に問題を抱えている人ですから、気にすることはありません。怒りの分泌物が出やすい人だ、という予見を持って付き合えばいいのです。怒鳴るにとどまらず、物理力を行使してくる場合もあります。机を叩く、灰皿を投げる、手が出てくる、まで幅はありますが、暴力性が発揮されたときは、演技ではないと知るべきです。

書店に並んでいるアンガーマネジメントの本は、脳内分泌の問題がある人に向けて行動療法などを説いたものです。こういう情緒不安定なだけの人は、ビジネスの現場からは淘汰とうたされていくものです。

「戦略的に怒鳴る人」に言い返してはいけない

問題は、戦略的に怒鳴る人。あるいは優位を保とうとして攻撃的な議論を進めてくる、後者のタイプへの対処です。怒鳴れば喉が痛いし、威圧的になれば嫌われるものです。それでもこうした態度を取ってくるのは、それ相応の利益を得られるからです。

怒鳴るという行為は、意思決定におけるショートカットのひとつです。ただし何の力も持たない人が怒鳴ったところで、誰も言うことなど聞きません。普通に議論したら負けるとき、言い分を押し付けられるだけの力が自分の側にあると自覚する人が、議論を省くために用いる手段なのです。

私自身は威圧的な人に対するとき、基本的に「はい、わかりました」と相手の言う通りにします。仕事上必要なら、土下座でもなんでもします。「うるせーな、頭悪そうだな」と思うだけで、感情的になることもありません。

相手が意図して攻撃的になる状況では、力関係においてこちらが劣位なのです。感情的であれ冷静であれ、相手の非論理に対して論理的に応じるのは、カテゴリー違い。言い返すなど、もってのほかです。敵は百も承知の上で攻めてきている、と見なければいけません。