「毎朝8時半に出勤」も「在宅勤務の強要」もパワハラだ
そもそも力とは、相手の意思に反して自分の意思を押し付けることです。それは一種のハラスメントであり、権力の本質を突き詰めればパワハラだと言えます。
払いたくない税金を払うのは、国家が暴力(バイオレンス)によって支えられているからです。昔は徴兵制があって、軍隊に行けば殴られるし死ぬかもしれない。誰も行きたくないのに、行かざるを得ませんでした。
会社の指揮命令系統や仕事も、すべてパワハラの塊です。たとえば、毎朝8時半に出社する決まりがパワハラです。会社という権力を背景にした就業規則という暴力装置があるため、一方的に決められた時刻に行かなければいけません。本当は、仕事に支障がなければ何時でもいいし、コロナがあろうとなかろうと在宅で構わないはずです。
逆に言えば、コロナで在宅勤務を強要されるのも同じです。「家にいると子どもがうるさいし、会社のほうが仕事がはかどるんです」と申し出ても、「来るな」と命じられてしまう。自己の意思に反してということをポイントに置くならば、濃い薄いの違いはあれど、誰もがパワハラ環境の中に組み込まれています。
そんな社会や組織で生きている以上、従わざるを得ません。会社を辞めてフリーランスになれば抜け出せるかというと、そうはいきません。今度は、契約自由の原則を盾にした金のパワーに縛られます。私のような作家業だと、誰を使うかは出版社の自由です。契約しないという形で作家を日干しにできる力を、組織は持っているのです。
マウンティング人間には「マフィアのビジネス」で対処する
事あるたびにマウンティングを取ろうとしてくる人も、こちらより優位に立つことによって、自分の利益が拡大することを狙っています。この人たちは、同僚や自分より下の相手に対してはしきりにマウンティングを取ろうと努めますが、自分の人事権を握っている上司など、立場が上の人間に対してはそうしません。
マウンティングは承認欲求の一種で、出世願望の変形です。出世できないことがわかっているから、同じ立場の中では自分が一番すごいと思われたり、褒められたいのです。
力を背景に攻撃的な態度に出る人と接するときは、まず相手の利害関心や、目指している利益は何なのかを見抜くように努めます。こちらは絶対に感情的にならず、冷徹であることが大事です。
ごり押しをするために怒鳴ったり攻撃的になる人を前にすると、誰でも面倒に感じて引いていくものです。この人たちは、その場はとりあえず思い通りにできても、もう付き合いたくないと思われるので、次がありません。
一度限りの付き合いで終わる相手とは、利害関係の分配を早く済ませておくことが肝心です。その究極は、マフィアのビジネスです。常に現金処理で、貸し借りをあとに残さないのが、あの人たちの流儀です。
応用問題に触れるとすれば、こちらがあえて攻撃的になり、怒鳴ったり威圧する演技をすることも考えられます。ただし、あまりお勧めはしません。そういう演技をしているうちに脳内分泌が活発になり、自分が瞬間湯沸かし器型になってしまう恐れがあるからです。