“半沢直樹”になれなかった住友銀行の伝説

「タガが外れた男だった」

誰もが熱狂し、身の丈に合わない熱量で突き進んだバブル期、國重惇史は住友銀行の一サラリーマンでありながら、大蔵省や政界、裏社会に深く食い込み、銀行にとっての重要情報を入手する「MOF担」として伝説的存在となった。

イトマン事件では、そのパイプを用いバブル期に溜まった銀行の膿を絞り出し、住銀を闇社会から救った。まさに時代の寵児。自他ともに認める「将来の頭取候補」だった。しかし、女性問題がそのキャリアに終止符を打ち、國重の周りから人が離れていく。バブルの崩壊とともに國重の人生は暗転していった。

「あの國重が失禁するとは」

難病になり1人で暮らすことも困難になった國重の自宅に、20年来付き合いのある著者・児玉博が掃除に通うようになったある日、住銀と平和相互銀行合併の舞台裏を詳述したノートを渡されたことをきっかけに本書は生まれる。

「驚愕の一言だった。金屏風事件とか、合併劇の中での断片的な情報は出ていたが、全体像はずっと闇の中だった」