今よりもずっと女性が生きにくかった時代を駆け抜け、いまや誰もが認める女性学のパイオニアである上野千鶴子さん。組織の中で前例のないことを通すために、空気を読んで、忖度も根回しもして、味方をつくってきたと言います。そんな上野さんが語る女性が「組織」で働くために身に着けるべきこととは——。
※本稿は、上野千鶴子、出口治明『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
世の中は正しいだけでは動かない
女性には根回しをしたことがない人が多いのかしら。
でもこれまで正しいことを言ったら通ったという経験はほとんどないはずです。世の中って正しいだけでは動きません。
もしかすると、男性が論理的な生き物だと思っている人は多いのかもしれない。けれど、そんなことないでしょう。男は論理では動かない。利害で動きます。
だから彼らを動かそうと思ったら、「こういうことをすれば、あなたにいいことがありますよ」と誘導するのが一番です。
自分の思いを実現するための空気を読むスキル
私はエサをちらつかせられるほど高いポジションにはいなかったけど、たとえば、貸しをつくるとか、「今回は私に協力してよ」くらいのことは言います。だってそれはお互い様ですから。
「空気を読む」のは、その目的は何か、ということです。飲み屋のおネエさんは、財布と面の皮の厚いおじさんの懐から、その分け前を引き出すために空気を読んで、いい気分にさせています。
私たちが空気を読むのは自分の思いを実現するためです。女性の中には、そんな根回しや忖度を快く思わない人もいますが、女性ももっとそういう配慮やスキルを身につけたほうがよいと思います。
だって男性たちは、お互いの間でそういう助け合いをやってきたのですから。義理と人情で、恩を売ったり買ったりしています。大学という大きな組織の中でも、そういう光景をずいぶんと見てきました。