オフィスや飲食店などで従業員にコロナ感染者が出た際、業者に除染の依頼をする事案が増えている。ジャーナリスト・僧侶の鵜飼秀徳氏は「九州の特殊清掃業者を取材したところ、除染する時間を深夜や営業時間外に指定されるケースも多いそうです。周辺の企業や住民に知れられぬよう、感染の隠蔽を図るような心理が働いているのです」という――。
除染のための化学噴霧器を保持している科学者
写真=iStock.com/m-gucci
※写真はイメージです

オフィス、飲食店、個人宅…コロナ感染拡大で除染依頼が急増

コロナ感染症が拡大するにつれ、感染源の除染を手がける特殊清掃業者への依頼が急増している。

特殊清掃業「友心まごころサービス」(福岡県久留米市)の代表、岩橋ひろしさんはこの1年、数多くのコロナ感染の現場をクリーニングしてきた。その除染作業からみえてきた3つの問題点を指摘してくれた。

それは、「感染の隠蔽」「悪質業者による情報漏洩のリスク」、そして「“ゴミ屋敷”の中での高齢者の孤独死」だ。岩橋さんは「こうしたコロナを巡る間接的な問題にも、国や行政は早急に手立てを整える必要がある」と警鐘を鳴らしている。

岩橋さんの本業は特殊清掃だ。特殊清掃とは、孤独死や自殺・他殺の凄惨な現場をクリーニングすることである。腐乱した遺体の体液などが残る現場は細菌だらけで、感染症に冒される危険性を秘めている。

「目や防護服の隙間などから細菌が入ると、極めて危険です。特にウイルス性肝炎にかかったご遺体からの感染はわれわれにとっても命取りになるため、完全に防御をした上で臨みます。コロナの除染には、この技術を応用しています」

建築中の戸建て住宅にコロナ除染の依頼が入ったワケ

コロナ感染症が流行する前から、岩橋さんは防護服やゴーグル、医療用のN95マスクで完全防御した状態での室内除染の経験を数多く踏んできた。そのため、特殊清掃の技術を生かしたコロナ除染にニーズが集まっているのだ。

この1年、独自の除染技術をもつ岩橋さんの会社には、コロナ感染者が出たオフィスや飲食店、ホテル、美容院、整骨院、遊興施設、学校、コールセンター、個人宅などからの除染依頼がひっきりなしに入っている。依頼主は九州が多いが、時には関東など全国に出張に出向くこともある。

変わったところでは先日、建築中の戸建て住宅の除染の依頼が入った。施工する大工さんに感染が発覚したからだ。多数の感染者を出している米軍基地の除染も手がけるが、こちらは守秘義務があり、詳細は言えないという。