SNS各社から「離縁状」を突きつけられた痛手は大きい

一方、共和党支持者や過激な極右団体のメンバーの間で利用が広がっている新興SNS「パーラー」も8日、配信の一時停止を発表した。アマゾンが「暴力行為をあおる投稿が続き、社会への脅威が差し迫っている」などとして、パーラーへのサーバー提供を取り止めたためで、グーグルとアップルもアプリのダウンロードをストップした。

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写真=iStock.com/DKart
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「世界最高の表現の自由のプラットフォーム」がうたい文句で利用者の投稿内容をチェックしないことがウリのパーラーだが、巨大プラットフォーム企業が相次いでパーラーとの関係を遮断し、機能不全に陥ったのだ。

トランプ大統領は、既存のマスメディアを敵視して「フェイクニュース」と決めつけ、自らの主張を支持者に直接訴える手段としてツイッターはじめSNSを最大の政治的武器としてきたが、SNS各社から「離縁状」を突きつけられた痛手は大きく、「トランプ劇場」は風前の灯になりつつある。

現実とはかけ離れた「もう一つの世界」を作り出したが…

ツイッターは約8800万人、フェイスブックは約3500万人のフォロワーを抱える。ここに向けてトランプ大統領は、多い時には1日に200回も投稿。世界の最高権力者の発信に、米国だけでなく世界中が注目せざるを得ないようにして政治的求心力を高めてきた。

実際、主要な政策、閣僚の起用や更迭、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談開催など、前ぶれなしにツイッターで突然公表するケースが相次ぎ、そのたびに世界を驚かせた。

一方、2020年11月の大統領選の後、ツイッターで「不正選挙が起きた」と根拠を示さない主張を繰り返し、この結果、共和党支持者の6割超が「バイデン氏が勝利したのは不正選挙のため」と信じるという、現実とはかけ離れた「もう一つの世界」を作り出した。

良くも悪しくも「ツイッター政治」を駆使してきたトランプ大統領は今後、既存のSNSに代わる新たな情報発信手段を模索するとみられるが、広範な支持者への直接的な訴えは難しくなりそうだ。