ネット企業の躍進を支えた通信品位法230条の「免責条項」
米国の巨大プラットフォーム企業は、ネット上での表現の自由を重視する通信品位法230条(いわゆる免責条項)により、手厚く保護されてきた。
1996年に制定された通信品位法230条は、内容に問題のある投稿を発信しても、問題ありとして投稿を削除しても、ネット企業は原則的に法的責任を問われないと定めている。表現の自由を重視する米国ならではの法律で、発信情報の責任を問われる既存のマスメディアを横目に、ネット企業が躍進するバックグラウンドとなった。
だが、2016年の大統領選以降、根拠のない妄言をつぶやき、事実に基づかないフェイクニュースを乱発するトランプ大統領の登場で、SNS各社は翻弄される。
それまで、大半の投稿は内容の真偽にかかわらず掲載してきたが、社会的影響力の増大に伴ってフェイクニュースなど負の部分への懸念が顕在化し、投稿の内容に一定のチェックを行わざるを得ない状況に追い込まれた。問題があると判断した投稿には警告マークや注記をつけ、利用者に注意喚起をする措置を次々にとった。
しかしながら、世界各国の指導者の投稿は公共性を考慮。トランプ大統領の投稿もフェイクニュースかどうかが不明であっても、可能な限り閲覧できるようにしてきた。
規制の「強化と撤廃」の狭間で苦悩するSNS企業
こうした中、通信品位法230条の見直しが俎上に上ってきた。
民主党サイドからは、トランプ大統領の投稿を規制する立場で、フェイクニュースの拡散や選挙に影響を与えかねない悪質な投稿には「もっと責任をもって関与せよ」という圧力が強まった。
一方、共和党サイドからは、トランプ大統領の投稿を妨げない視点で、ネット企業が自らの判断で投稿を削除することは表現の自由を保障する合衆国憲法修正第1条に抵触すると指摘され、「検閲のような関与はするな」と迫られた。
両党とも、見直しという点では一致しているものの、一方は規制強化、片や規制撤廃という、まったく正反対のアプローチだった。
2020年11月末には、上院の公聴会で、SNS各社のトップが呼び出され、通信品位法230条について本格的な議論が交わされるに至った。