「表現の自由」は米国の民主主義の根幹にかかわる問題

SNS企業が利用者の投稿に相応の責任を負うことになれば、監視コストの増加、膨大な訴訟対策費用、サービスの利便性低下につながりかねない。さりとて、投稿を放置したままでは社会的なバッシングが激化する。SNS各社は、どちらを向いても厳しい指弾を受けることになった。

ただ、バイデン新大統領が就任し、民主党が下院に続いて上院も多数派となった状況では、民主党主導で見直しが進む可能性が高まりそうだ。

とは言っても、米国の世論が真っ二つに割れている現状を見れば、投稿の内容について「何が暴力の賛美に該当するのか」「何がフェイクニュースなのか」といった線引きを、民間企業が公正中立に行うことは至難と言わざるを得ない。

そんな苦悩の末、SNS各社は、米連邦議会議事堂乱入事件を機に、トランプ大統領の投稿を封殺するに至ったのである。

大統領という職にある人物が公共の秩序を破壊する結果をもたらしたとなれば、投稿の制限は一定の合理性がある。とはいえ、表現の自由を制限されることが無条件で認められるわけでもない。

日本は法整備がなく悪質投稿は野放し状態

ドイツのメルケル首相が「表現の自由は基本的権利として重要。意見表明の自由を制限する行為は法に従うべきで、民間企業が決めるものではない」と問題視するのもうなずける。フランスのルメール経済・財務大臣も同様の見解を示すなど、強くなりすぎた巨大プラットフォーム企業に対する懸念も高まっている。

ことは、民主主義の根幹である表現の自由にかかわる問題だけに、簡単には答えは出そうにない。

一方、日本やEUには、米国の通信品位法に該当する法律はなく、巨大プラットフォーム企業に免責特権を与える法的根拠がない。そのため、民間企業に投稿の可否の線引きを求める議論はなじみにくい。

特に日本では、投稿の内容について議論が起きたり、アカウントの停止が問題になるケースは、ネットにおける中傷問題として語られることが多い。

記憶に新しいのは、フジテレビのテラスハウスに出演していたプロレスラーの木村花さんがSNSで受けた誹謗中傷に耐えかねて自殺した2020年5月の事件だ。12月半ばには、中傷の投稿をした加害者の1人が特定され、侮辱容疑で書類送検された。