この事件は大きな社会問題となり、政府は、悪質投稿の加害者を容易に特定できる新たな裁判手続きの創設を盛り込んだ「プロバイダー責任制限法」の改正案を通常国会に提出することになった。
ただ、投稿の削除は、SNS会社の自主的判断に委ねるとしており、誹謗中傷の投稿の拡散に限界があるのは否めない。SNS各社は、悪質な誹謗中傷を繰り返す場合はアカウントを凍結するとしているが、適用例は少なく、事実上、野放しになっているのが実態だ。
日本のフェイクニュース対策は「ゆるすぎ」
一方、フェイクニュース対策は、大きな実害が出ていないこともあって、感度が鈍い状況が続いている。
2020年2月に総務省がまとめた報告書では、「事業者による情報の削除等の対応など、個別のコンテンツの内容判断に関わるものについては、表現の自由の確保などの観点から、政府の介入は極めて慎重であるべきだ」と、SNS企業に「自主的対策」を求めただけで、法的規制は見送り、強制力のある措置にはまったく踏み込まなかった。
SNSを運営する巨大プラットフォーム会社が米国の企業であっても、フェイクニュース対策で法的措置を取る国々が欧州を中心に増えている中、日本の政府は実質的に何もしないと宣言しているに等しい。
表現の自由や言論の自由との微妙な兼ね合いを差し置いても、現状の対策に「ゆるすぎ」の感は否めない。世界を震撼させているフェイクニュース対策に毅然とした姿勢をとることが求められている。