事実上はメルツ氏とラシェット氏の一騎打ち
ドイツで年明け早々、与党CDU(キリスト教民主同盟)の党首選が代議員の投票によって行われる。本来なら2020年4月に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて12月まで延期され、さらに21年1月中旬に繰り延べられることになった。このCDU党首選で、秋に退任予定のアンゲラ・メルケル首相の後継候補が決まる。
2005年から4期16年の長期にわたって政権を担ってきたメルケル首相だが、近年は長期政権の弊害も指摘され、地方選での敗北も相次いだ。そのため2018年12月の党首選には出馬せず首相職に専念、後継にアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(AKK)元ザールラント州首相を指名したものの、この戦略はうまくいかなかった。
次期党首に名乗りを上げたのはアルミン・ラシェット現ノルトライン=ヴェストファーレン州首相、弁護士としても知られるCDUの重鎮フリードリヒ・メルツ氏、外交通である連邦議会議員ノルベルト・レットゲン氏の3名。しかし事実上は一般党員の人気が高いメルツ氏と、CDU議員の信頼が高いラシェット氏の一騎打ちの様相を呈している。
新党首の下で挙党一致体制を作り上げることができるか
メルツ氏は長年にわたりメルケル首相のライバルであったことでも知られる。前回2018年12月の党大会でも党首選に出馬したが、決選投票でAKKに敗れた。捲土重来を期するメルツ氏は現在CDU青年部の支持を得ているが、強い保守色を打ち出しメルケル路線からの転換を主張していることから、敬遠される向きも強い。
そう考えると、メルケル路線の踏襲を明言するラシェット氏に分があるようだ。メルケル路線の踏襲は望ましいことだが、重要なのはCDUが新党首の下で挙党一致体制を作り上げることができるかどうかだ。そうなれば有権者の支持も広がり、9月26日に実施予定の総選挙でもCDUは議席を増やすことができるだろう。