2020年はコロナ禍で多くの業界が打撃を受けた。だが逆に、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの急成長を遂げた大手動画配信サービスのような業種もある。国際エコノミストの今井澂さんは「本格化し始めた5Gによって、これらのビジネスは今後さらに活性化します。一方、新聞・テレビなど旧メディアは衰退するリスクが大きい」という――。

※本稿は、今井澂「2021コロナ危機にチャンスをつかむ日本株」(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

5G
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コロナ禍で急成長する動画配信サービス

新型コロナショックによって最も打撃を受けた産業の1つにエンターテインメント業界があります。

音楽や演劇などの市場は2019年には、ぴあ総研によると過去最高の6295億円となり、日本映画製作者連盟によると映画興行も過去最高の2611億円を記録しました。合計すれば年間9000億円近い規模です。

ところが、2020年2月の政府の自粛要請以来、観客は会場まで足を運んで音楽、演劇、映画などを楽しめなくなってしまいました。市場規模は少なくとも3分の1まで縮小したのではないかと見られています。エンターテインメント業界が新型コロナショックから受けたダメージは観光業界や航空業界に勝るとも劣らないでしょう。

そのいっぽう、ぐんぐんと伸びているのがネットフリックスやアマゾン・プライムビデオ、ディズニープラスなどの大手動画配信サービスです。いうまでもなく、これも新型コロナによる巣ごもり需要が追い風になっています。

ちなみにネットフリックスの有料会員数は6月末に全世界で1億9295万人となり3月末よりおよそ1000万人も増加しました。日本でも8月末には1年前の300万人から500万人へと大幅に増えています。

ところで、アメリカのウォルト・ディズニーが8月に発表した2020年4~6月期決では最終損益が約5000億円の赤字でした。赤字転落は19年前に記録して以来のことで、新型コロナの感染拡大によって世界各地のテーマパークを開けなかったことと、新作映画の公開が延期されたことが大きく響きました。

しかし、ウォルト・ディズニーは2019年11月に動画配信サービスのディズニープラスをスタートさせており、2020年8月には有料会員が6000万人を突破したのでした。ウォルト・ディズニーは、歴代の世界興行収入ベスト5の映画にすべて関わっており、家族向けの息の長い映画も多数そろえていて、人気コンテンツの豊富さで抜きん出ています。今後、ディズニープラスがテーマパークと映画公開に代わる収益の柱になってもおかしくはありません。

また、ウォルト・ディズニーは4月に映画館公開の予定だった新作映画『ムーラン』を、映画館公開ができなくなったため、9月からディズニープラスで配信することにしました。

新作映画の映画館とネットでの同時封切り

新型コロナショック以前も、動画配信サービスの台頭によって新作映画の封切りを映画館とネットで同時に行ってもいいのではないかという声が出てきていたのですが、そうなると映画館への客足が遠のくとして映画館産業は強く抵抗してきました。

映画館なら入場料だけでなく飲食や関連グッズの収入も期待できます。とくに映画館での関連グッズの売上げは映画会社にとっても大きな収益源の1つなので、映画会社としてもネットとの同時封切りにはおよび腰だったのです。

ところが、新型コロナショックによって映画館での公開そのものができなくなり、今や否応なく新作映画の封切りもネットで行わざるを得ないという流れになってきています。『ムーラン』がその先鞭をつけたともいえるのです。

では、新型コロナが終息すれば、新作映画の映画館とネットでの同時封切りという流れは止まるでしょうか。つまり、以前のように封切りは映画館だけになるのか、ということです。おそらく同時封切りは続くでしょうし、それどころか映画館産業のほうがなくなってしまう可能性さえ否定できません。というのは、これからの動画配信サービスにも5Gが大きな力になるからです。