5Gで映画館がいらなくなる

新作映画の封切りが映画館だけだったら、上映の映画館数と期間が限定されているため、どうしても時間が取れなくて見逃す人もけっこういます。ネットでの封切りなら見逃すことはありません。これがネットの1つのメリットです。

今井澂『2021コロナ危機にチャンスをつかむ日本株』(フォレスト出版)
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デメリットについては、ネットは基本的に1人で見るのに対し、映画館なら友人と一緒に見に行けるので、見終わったあと、友人とあれこれ映画の感想を語り合うことは楽しい、ネットだとそういうことはできないという声があります。

ところが、技術は日進月歩。ディズニープラスでは2020年9月から、別の場所にいる友人と同じ映画やドラマを一緒に見られるという同時視聴の機能を備えました。これは、ディズニープラスの会員の1人が見たい映画やドラマを選んで招待用のアドレスをつくり、一緒に見たい会員にそのアドレスを送ることによって実現します。会員なら最大7人まで同時視聴が可能で、その会員同士でチャットや絵文字による会話ができるのです。

映画館産業はなくなるかもしれない

ネットの同時封切りに対するほかの有力な反対意見には、映画館で体験する大画面と迫力ある音響には自宅でのネット視聴はとてもおよばないというものがあります。けれども、こうした点にこそ5Gが威力を発揮することになるのです。

自宅に50型くらいの大画面のディスプレイと高音質のオーディオセットをそなえて5Gにつないだ動画配信サービスで映画を見ることによって、もちろん画面の大きさは映画館にはおよばないとしても(サウンドなら自宅でも映画館並みの音質を実現するのは可能)、映画館にいるのと同じような環境をつくることができます。むしろ視聴中の飲食については、自分の好みをそのまま反映できる自宅のほうが質は高くなるはずです。

もっとも、新型コロナショックがなかったら、新作映画の映画館とネットとの同時封切りは映画館産業の強い抵抗によってなかなか実現しなかったでしょう。この点でも新型コロナショックは新しい時代の扉を開けたのです。

しかも前述したように、同時封切りがずっと続いていくのではなく、映画館産業のほうはなくなるかもしれません。映画館が残ったとしても、それは新作映画のプレゼンテーション用くらいでしか使われなくなるのではないでしょうか。