テレビや新聞を駆逐する5Gの脅威

ネットの出現によって新聞やテレビなどの既成のメディアの影響力が落ちてきているわけですが、それを一段と促進したのも新型コロナショックです。

NHK
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日本新聞協会は毎年10月現在の総発行部数(日刊116紙)を年末に発表していますが、2019年は一般紙とスポーツ紙の合計で約3780万部でした。これは前年比で約210万部もの減少です。しかも、この減少幅は5.3%減で過去最大となりました。

最も発行部数が多かったのは1997年の約5377万部。以後の22年間で3割近い約1597万部も部数が減りました。うち過去10年間の減少が約1254万部なので、近年の減少の勢いがいかに強いのかがよくわかります。

一般紙とスポーツ紙に分けて過去5年間の推移を見ると、2014年には一般紙が約4169万部、スポーツ紙が約368万部だったのが、2019年にはそれぞれ約3488万部、約293万部へと減少しています。

特徴的なのは一般紙が16.3%の減少だったのに対し、スポーツ紙は20.2%の減少となり、減少幅が4%近くも大きかったことです。スポーツ紙の減少スピードは一般紙よりも速くなっています。

そのような状況のときに2020年に襲来したのが新型コロナショックでした。プロ・アマ問わず国内のほとんどのスポーツ競技が中止になってしまい、スポーツ紙は長期間、最大のコンテンツを失ったのです。とすれば、スポーツ紙は売れるわけがありません。近い将来、廃刊になるスポーツ紙が出てきてもおかしくないでしょう。

一般紙にしても減少のスピードがスポーツ紙よりも遅いというだけで、前途が暗いのには変わりありません。

テレビの視聴率もやはりネットのために大幅に落ちてきました。テレビの場合、視聴率と広告費には相関関係があるので、視聴率が落ちると広告費も減っていきます。

2020年3月に電通が発表した「日本の広告費(2019年)」という調査では、テレビ広告費は前年比2.7%減の約1兆8600億円でした。しかも2014年以来6年連続の2桁成長で約2兆1000億円(前年比19.7%増)となったネット広告費にテレビ広告費は初めて追い抜かれたのです。

5Gの登場で最も打撃を受ける業界こそテレビ局

2020年は新型コロナショックで東京五輪・パラリンピックをはじめ各種イベントの延期や中止が相次ぎ、経済活動も停滞しているために企業は広告費を縮小しています。それがテレビ広告費に響くのは当然です。日経広告研究所が7月に発表した2020年度の国内の広告費の見通しでは、テレビ広告費は前年度比14.8%減になります。ネット広告も新型コロナショックの影響を受けるものの、2020年度も0.5%増のプラスを維持する見込みです。

フジテレビ
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少し前なら5G関連の話題を取り上げるテレビ番組はけっこうありました。そういう番組で語られるのはもっぱら5Gのもたらすバラ色の未来だったのですが、実は5Gの登場で最も打撃を受ける業界こそテレビ局なのです。

すでに述べたように、5Gは動画配信サービスやオンラインライブなどの映像とサウンドの質が向上しますから、テレビの視聴者もそちらに引っ張られていきます。

10年くらい先になると、経済合理性を最優先するアメリカではテレビ局という業態そのものがなくなっているかもしれません。日本の場合、テレビ局はどうにか存続はできるにしても、活路を見つけないと経営は厳しくなるいっぽうでしょう。

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