「金の切れ目が縁の切れ目」会社を見限る社員が急増しそうな気配

こうしたボーナスの低下・不支給は、当然、社員のモチベーションに影響を与える。中堅IT・インターネット業の担当者はこう話す。

「コロナの影響があり、今冬のボーナスを給与に応じた一律支給に変更しました。そのため、『自分は正当な評価がされていない』との不満が発生する可能性が高い。上司も、部下と面談する機会が失われており、説明が難しい状況です」

金の切れ目が縁の切れ目という言葉があるが、コロナ禍とはいえ、これまで献身してきた企業からの見返りが十分でなければ、人心は離れるということは十分に考えられる。

ボーナスなしの文字に嘆く人のイラスト
写真=iStock.com/Ja_inter
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転職求人倍率は昨年よりは下がっているものの、2020年10月の倍率は1.65倍と堅調だ。業種別ではIT・通信は4.89倍と売り手市場にある(DODA調査)。引く手あまたのIT人材であれば転職も容易だろう。

人事部「ボーナス支給を引き金に離職者が増えるのではないか」

じつはIT人材に限らず、冬のボーナス支給を引き金に離職者が増加するおそれを多くの企業の人事担当者が懸念している。

ボーナス支給の条件を、「支給時期に在籍している」とする企業も多く、これまでにもボーナスをもらってトンズラする社員もいた。

ボーナスはモチベーションに影響を与えるだけではなく、会社や事業の将来性を占う試金石でもある。その意味で、今後想定される離職者増加の背景にはボーナス案件に加えて次の2つの要素も考えられる。

① コロナ禍による業績不振やビジネスの先行きなど会社の将来性に不安を持つ人が増えている。
② テレワークの常態化によって会社への帰属意識や上司への信頼感が失われつつある。

ビジネスコンサルタントの大塚寿氏は、ビジネスパーソンが転職するべきかどうかの判断は、①自分の業界、②自分の会社、③自分の部門、④直属の上司、⑤自分自身――の5つの順番で分析することが重要だと、筆者の取材で述べている。

具体的に言えばこういうことになる。

・自分の業界は将来も有望なのか。
・会社は将来も生き残れるビジネスモデルや戦略・ビジョンを持っているか。
・会社が安定していても自分の部門は本流なのか傍流なのか。
・上司は信頼に値する人物なのか

これらをしっかり分析・評価する。もちろん自分自身はどうしたいのかも大事な判断基準だが、「周辺環境」をより重視したい。なぜなら「ビジネスパーソンは大海に浮かんだ小舟のような存在にすぎないからだ」と大塚氏は言う。