資金難に悩んだ起業直後

人は自分が理解できないものにお金を投資しようとは思いません。そのためベゾスは金融機関に勤務していた頃の自己資金のほか、両親からも投資してもらいますが、利用者に良いサービスを提供しようとすればするほど多額の投資が必要になり、資金的にはしばしば危機に陥っています。

アマゾン
写真=iStock.com/AdrianHancu
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困り果てたべゾスは、友人に「君だけでも小切手を切ってくれ。誰かが行動を起こしてくれないと、誰も動かないんだ」と懇願。最終的に20人の投資家から98万ドルを調達し、しばらくしてベンチャーキャピタルのクライナー・パーキンスからの投資を得て、ようやく資金難から解き放たれています。

その後も株主たちからは、成長はしても利益の出ないアマゾンの経営に関して株主総会などで非難されることもありました。しかしベゾスは「現在の損失は将来の大きな売り上げと利益を得るために不可欠なもの」と主張することで、利益の出ていない企業の巨大な可能性」をウォール街に納得させます。

通常、株価はその企業の売り上げや利益によって決まるものですが、べゾスは「現在の売り上げや利益」ではなく、「未来の巨大な売り上げと利益」を株主たちに信じ込ませることで、多くの創業者が直面する「ウォール街からの圧力」を見事に乗り切ったのです。当時のアマゾンは利益はなくとも株価は上昇する企業だったのです。

ITバブル崩壊で21カ月連続株価下落

そんなベゾスの戦略が大きく狂ったのが2000年から2001年にかけて起きたITバブルの崩壊と、それにともなって株価が21カ月連続で下落した時です。それまでの「ネット時代の寵児」は一転して、「ネット時代のスケープゴート」となり、ウォール街からのベゾスへの圧力は日に日に強くなっていきました。実際、多くのIT企業が倒産したり、身売りに追い込まれました。

当時を振り返ってベゾスは「自分が大事にしていた貴重な人が去っていった、憂鬱な日々だった」と振り返っていますが、それでもベゾスは「株式市場は短期的には投票機、長期的にははかり」であるというベンジャミン・フランクリンの有名な言葉を引用して、社員たちに「自分と株価は別物」であり、株価の下落などを気にすることなく「顧客第一」を貫くように檄を飛ばしています。