独自のポリシーに基づく長期投資で巨万の富を築いた伝説の投資家、ウォーレン・バフェット。時代遅れと批判されても、「自分の理解できる事業に投資する」というポリシーを決して捨てなかったのは、なぜか。そこには「内なるスコアカード」というキーワードがある――。

※本稿は、桑原晃弥『乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)を加筆再編集したものです。

総資産が9兆円近くといわれる伝説の投資家、ウォーレン・バフェット。会長兼CEOを務める持株会社バークシャー・ハサウェイの株主総会にて(2019年5月5日)
写真=AP/アフロ
総資産が9兆円近くといわれる伝説の投資家、ウォーレン・バフェット。会長兼CEOを務める持株会社バークシャー・ハサウェイの株主総会にて(2019年5月5日)

90歳になった今も「どこに投資したか」がニュースに

「人がどうふるまうかを大きく左右するのは、内なるスコアカードがあるか、それとも外のスコアカードがあるかということなんだ。内なるスコアカードで納得がいけば、それが拠り所になる」
(アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳『スノーボール』〈上〉 日本経済新聞出版社)

2020年8月、ウォーレン・バフェットが日本の五大商社に投資したことが大きな注目を集めました。

とはいえ、バフェットが日本の会社に投資したのは今回が初めてではありません。東日本大震災の直後にも日本を訪れ、投資先の福島のメーカーを訪問しただけでなく、「もし日本の大企業から明日電話をもらって、バークシャーに買収してほしいという申し入れがあれば、飛行機に乗ってすぐに駆け付けますよ」といい切るほど、日本の企業への関心を高く持ち続けていたのがバフェットです。だから、日本企業への投資自体はさほど驚きはしません。

しかし、「なぜ今さら商社なのか?」という疑問が、今回の大きなニュースにつながったのではないでしょうか。推測や分析がなされる一方で、その意図はつかみきれないという人も少なくありません。このように、その投資先が世界的ニュースとなるほど、90歳を迎えたバフェットの影響力は大きいのです。