「自分が正しいと信じることをやる」

一方、投資家の多くは「時代の流行」や「時代の寵児」への投資を好みます。「理解しているかどうか」よりも、「今、流行っているしみんなが投資している」というのがその理由ですが、こうした「他人任せ」「流行を追う」だけの投資は、バフェットの投資に対する考え方とは相反するものでした。

バークシャー・ハサウェイの本社がある米ネブラスカ州オマハのキューイット・プラザ(2013年撮影)
写真=iStock.com/RiverNorthPhotography
バークシャー・ハサウェイの本社がある米ネブラスカ州オマハのキューイット・プラザ(2013年撮影)

そのため、バフェットは急成長する人気のIT株などには目もくれず、自分が本当に理解できる、ウォール街から見ると「古臭い」企業に投資することがしばしばでした。そのせいで、他の投資家や批評家から「時代遅れ」「昔日の象徴」などと痛烈に批判されることが過去に何度もありました。

しかし、そんな逆風の中でもバフェットは決して自分の信念を曲げることはありませんでした。理由は、大切なのは「周りが正しいといっているから」ではなく、「自分が正しいと信じていることをやる」ことだと信じていたからです。

「人がどう振る舞うかを左右するのは、内なるスコアカードがあるか、それとも外のスコアカードがあるかということなんだ。内なるスコアカードで納得がいけば、それが拠り所になる」とバフェットはいいます。

結果、半年、1年と経つうちに流行の株は株価を下げ、多くの人が損害を被る中、バフェットはしっかりと利益を上げ、「やはりウォーレンのいうことは正しかった」と評価を上げることになったのです。

流行に背を向け、周りから非難されるのは辛く厳しいものですが、そんな時にも自分の信念を守ることこそが難局を乗り越える力となるのです。

経営危機の大手投資銀行の立て直しに関与

上記は投資に関する難局でしたが、バフェットは別の難局も経験しています。1991年、バフェットは国債の不正入札によって経営危機に陥ったソロモン・ブラザーズの暫定会長に就任しています。

「どれほど金を持っているか、去年どれだけ稼いだかが成功の尺度」となる企業風土がもたらした不正事件でしたが、暫定会長を引き受けることは「世界一の投資家」と呼ばれるバフェットにとってリスクのある選択でもありました。