いまや「GAFA」の一角として、時価総額1兆5000億ドルを超える巨大企業に成長したアマゾン。利益を出せずに株主から批判され、ITバブル崩壊の影響で苦境に陥っても、創業者ジェフ・ベゾスは不屈の姿勢を保ち続けた。なぜベゾスは倒れなかったのか――。

※本稿は、桑原晃弥『乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)を加筆再編集したものです。

米ワシントン州シアトルにあるアマゾン本社の、植物園のようなオフィス「スフィア」棟を歩くジェフ・ベゾス(2018年1月)
写真=AP/アフロ
米ワシントン州シアトルにあるアマゾン本社の、植物園のようなオフィス「スフィア」棟を歩くジェフ・ベゾス(2018年1月)

インターネットビジネス黎明期からの旗手

株価が30%上がったからといって30%頭がよくなったと君たちが感じることはないはずだ。それなら、株価が下がったときも、30%頭が悪くなったと感じなくていいだろう。
(ブラッド・ストーン著、井口耕二訳『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』日経BP社)

多くの企業がコロナ禍で逆風となる中、巣ごもり消費の増加で売り上げを伸ばしているのがアマゾンです。時価総額は今や1兆5000億ドルを超え、同社の株式の11%を保有する創業者ジェフ・ベゾスの資産は約20兆円と、2位のビル・ゲイツを大きく引き離して世界一のお金持ちの座を確固たるものとしています。

もはや無敵の存在となりつつあるジェフ・ベゾスですが、これまでに3度の逆境を経験しています。

1度目の逆風は1994年の創業から翌年のサービス開始までです。同年初め、金融会社のD・E・ショーに勤務していたベゾスはインターネットの急成長に気づき、「年に2300%も成長しているとなると、すぐに行動に移さなければなりません」と同社を退社、同年7月にアマゾンの前身「カダブラ」を登記(95年2月にアマゾンを登記)しています。

同時にサービスを開始するためのシステム開発なども進めていますが、当時、インターネットによるビジネスの将来性を理解している人はほとんどいませんでした。実際、べゾスの「インターネットで本を売る」というアイデアについて、のちにアマゾンから手痛い反撃を受けることになる書店の人たちの評価は「コンピュータおたくが何かいってるぞ」程度のものでした。