「見知らぬ人を助けるランキング」で日本は144カ国中142位

さらに興味深いのは、図表2の「自分は役に立たないと強く感じる」かと質問したものだ。日本は「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の二つを足した割合が、アメリカやイギリス以下になっている。これを見ても、たんに欧米がポジティブシンキングだとはいえない。

自分は役に立たないと強く感じる

さらに職業選択において「収入」重視と答えたのは日本が調査国のなかでもっとも多い。

職業選択の重視点

また、日本人は欧米よりも自己責任を徹底する。よく使用されるのが、団体CAFが提示しているWorld Giving Indexだ。これは社会的支援指数ともいうべき、他者への支援を定量化したものだ。この2018年版を見ると、「見知らぬ人を助けるランキング」で世界各国のうち、144カ国のうち142位となっている。

なお、この手の調査を、そのまま受け取ってはいけない。定量的な数字と異なり、言語の違いによる調査のニュアンスにも大きく左右される。しかし、私の個人的な経験からも、これらのデータを覆す実感にはいたっていない。たとえば私の妻が妊娠中に電車に乗ると、多くの男性たちは席を譲ってくれない。あるとき、席が空いたからと近寄ると、50代くらいの男性が妻をはねのけて座った。それも数度ある。マタニティマークをつけている女性が前に立っても、なかなか譲らない。

自己責任感が強い分、他人に迷惑をかける人には冷たい

私は家族とマレーシアに住んだことがあるが、そのとき、幼い子どもに、いたるところで住民が優しくしてくれたことが印象的だ。そのいっぽうで、日本では子どもが泣くたびに、チッと聞こえるように舌打ちされたり、露骨に嫌な顔をされたりした。

もっともマレーシアの犯罪発生率と日本のそれでははるかに日本が安全とわかっている。強盗発生率もそうだ。それでもなお、中根千枝さん『タテ社会の人間関係』、土居健郎さん『「甘え」の構造』、あるいはルース・ベネディクトの『菊と刀』などなんでもいいのだが、日本人の、ムラの関係者には優しく、外部の人間には冷たい性質を私はいまだに感じてしまう。

日本人は他人に迷惑をかけないように教育が徹底しているため、犯罪等は少ない。しかし、自己責任感が強い分、他人に迷惑をかける人には冷たい。妊婦や赤ん坊にたいしても、積極的に助けようとはならない。欧米でいわれるのとは違う意味で、自己主義、自己責任主義なのだ。