韓国統計庁の「経済活動人口調査 労働形態別の付加調査」によると、2019年に柔軟勤務制(時差通勤制や柔軟な勤務体制、選択的勤務時間制、在宅勤務・テレワーク制など)を経験した労働者は221万5000人であったが、このうち在宅勤務・テレワーク制の経験者は4.3%に過ぎなかった。

数字で見ると、2019年に韓国で在宅勤務・テレワークを経験した労働者の数は9万5000人だ。2015年の6万5000人、2018年の7万9000人に比べれば増えているが、賃金労働者の総数が2000万人を超え、正規労働者も1300万人程度いることを考慮すれば、在宅勤務・テレワークの経験比率があまりにも低い。韓国は在宅勤務に対して、不信感と非効率というイメージをもっていたのだ。

中高年世代の組織文化では消極的だった

トフラーの予測はなぜ韓国でだけ当てはまらなかったのだろう? 彼が予測した在宅勤務は「対面してこそ仕事だ」という韓国式文化を打ち砕くことができなかったのだ。ところが、トフラーですら崩せなかった壁を新型コロナウイルスが崩した。

2020年に入って韓国企業内に在宅勤務やテレワークが広がりはじめた。SKイノベーションの労使に至っては、賃金交渉をウェブ会議で行っている。賃金交渉を話し合うべき重要な場だが、非対面でも可能な会議だと判断すること自体が、驚くべき変化の兆候といえるだろう。

テレワークと在宅勤務は以前から重要なテーマだった。未来での働き方がその方向に進むということには異論はない。しかし、実行となると違った。新しいものが出てくると、それを実際に経験するまでは、大きな支障がない限り従来の方式や慣習を維持しようとするものだ。

向かい合って会議し、がむしゃらに残業し、会食で関係性を深めながら仕事をするという文化に慣れた中高年世代の組職文化から見ると、在宅勤務はむしろ非効率的に思えた。手慣れたこれまでのやり方は成果も検証されているため、あえて新しいやり方を試みたくはない。そのため、技術的にテレワークや在宅勤務が十分に可能になってからも、企業は適用に消極的だった。

「仕方なく、期限付き」だったのが…

慣習を破るのは難しいことだ。スローガンとしては聞こえのよい「変化と革新」という言葉も、実行するとなると負担に感じる人が意外に多い。韓国の大企業は2000年代に入った頃から事あるごとに「変化」や「革新」をうたってきたが、いざ組織文化の変革を始めようとすると消極的であり、既存社員からの反発も大きかった。