新型コロナウイルスの感染拡大は、スキンシップが多い恋人たちの付き合い方も変えた。短期間で感染者が急増した韓国では、若者のデートパターンに変化が見られたという。経営戦略コンサルタントのキム・ヨンソプ氏が彼らの動向を分析した――。

※本稿は、キム・ヨンソプ、渡辺麻土香訳『アンコンタクト 非接触の経済学』(小学館)の一部を再編集したものです。

新郎新婦が手を繋いで海に沈む夕日を見ている
写真=iStock.com/kyonntra
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220組が「マスクキス」した合同結婚式

2020年2月20日、フィリピンの都市バコロド(Bacolod)で行われた合同結婚式の写真が注目を集めた。220組が青いマスクをしたままキスするシーンは、婚姻が宣言される瞬間をとらえたものだ。結婚式の間ずっと、最も重要な瞬間さえマスクをつけたままという写真は、バコロド市広報室で撮られ、ロイターを通して世界中のメディアに広がった。

これまでにも合同結婚式の写真は数多く見てきただろうが、こんなシーンは初めて見たはずだ。人口51万人のバコロドでは、市が主催し、伝統行事として合同結婚式を毎年行ってきた。

2020年2月の合同結婚式は例年とは違っていた。全てのカップルに結婚式前の14日間の行動履歴の記録を提出してもらい、式場に入る全ての招待客にマスクを着用させ、体温チェックをし、消毒剤で手を消毒させた。結婚式の司式者と招待客もみんなマスクをつける。

これらは全て新型コロナウイルスの影響を受けたものだ。伝染病も感染も恐ろしいが、だからといって結婚式をしないわけにはいかない。人類の文化と習慣は、そう簡単に全てを変えることはできない。だが、変化は生じる。

「触れる」から、「不安を解消する」愛し方へ

私たちは安全で平穏な時にだけ恋をするのではない。不安でつらくて苦しい状況でも恋に落ちる。苦難の中にあっても、愛によって幸せと希望を得ることがある。伝染病の恐怖は今回が初めてではない。SARS、MERSを経て新型コロナウイルスまで経験した。これからも新しい伝染病が現れる可能性は高い。経験を重ねる中で無頓着になるのではなく、アンコンタクトに対する欲求と必要が蓄積されていく。

全世界がかつてより密につながり、交流も増えた。どこで発生しようと、伝染力が高ければ一瞬にして世界中に広がり得るのだ。

社会的関係や業務のための接し方を、ウェブ会議をはじめとしたアンコンタクト方式に切り替えることについては抵抗なく受け入れることができるだろう。どんな方式であれ仕事さえうまくいけばいいのだから。反対に、男女間の愛情関係にアンコンタクトを取り入れることは非常に難しい。恋愛と結婚は、スキンシップやキスといった緊密なコンタクトと切り離すことができないからだ。

だが、それでも代案を探る人は現れるものだ。それ自体が変化である。本能的欲求や人類が培ってきた男女間の愛情表現とふれあいの文化そのものを変えるのではなく、不安を解消する方法を探ることで、それらを守ろうとしているのだ。コンタクトの欲求のためにアンコンタクトの方法を駆使するわけである。