コロナ禍で生まれたデートパターンとは
筆者はこの時期に注目した。不安だからといって、私たちの恋愛や愛情表現までを止めることはできない。人びとは確実に不安を克服する代案を見つけるはずだと考え、その方法を観察することにした。新聞もテレビもインターネットもユーチューブも、この時期に世間が最も注目するコンテンツは新型コロナウイルスに関するものだということで、それぞれに多様な観点から色々と語っていた。
その中でも興味深かったのは、韓国の通信社「News1」の記事「『マスクキス』コロナ禍での愛し方? 陽性患者の行動履歴公開も『怖い』」(2020年3月3日)だった。この記事は、新型コロナウイルス時代における恋人たちのデートパターンを、匿名コメントを使いながら彼らが直接語ったかのように掲載したものだ。
交際3カ月の彼女がいて新型コロナウイルス感染者のいない区域にある安全なモーテル〔訳者注:韓国のモーテルは、単身や同性同士での利用の他、ラブホテルとしても利用される〕探しに力を入れているという会社員男性の話から、会う回数を大きく減らし、テレビ電話やメッセンジャーを利用して日々のやりとりをする中で、相手を一層愛しく感じるようになったという大学生の話、さらには、ソウルは安全ではない気がするからと、コロナウイルス感染者情報アプリを調べて、感染者が少なく地理的にも近い南楊州の無人ホテル〔訳者注:フロントがなく常駐スタッフもいないホテル〕に行ったら、満室だったという蘆原区在住者の話などが紹介されていた。
「コロナ モーテル」が急上昇ワード1位に
記事で紹介された匿名の人物が実在するのかは定かでない。記者の周りで聞かれた話やオンラインコミュニティに出回っている話をまとめて書いただけかもしれないが、それでも構わなかった。十分にあり得る話であり、筆者自身も周りの人から聞いていた話だったからだ。
「モーテル」を検索した時の関連検索ワードの中で、急上昇ワード1位になったのが「コロナ モーテル」だった。恋人とのスキンシップとセックスのためにモーテルに行くならば、できるだけコロナウイルス感染者の行動履歴から離れた、陽性患者が発生していない地域のモーテルに行くという人が相当数いるということだ。
新型コロナウイルス初の感染者が出てから、陽性患者が増えていき、疫学調査で得られた動線情報が発表され始めた1月末、「コロナ モーテル」に対する検索関心度が高まった。だが2月中旬になると関心は薄れ、2月13~19日までの期間は関心度がゼロに近くなる。ところがその後、大邱を中心に陽性患者が急増した2月20日からは、再び「コロナ モーテル」に対する検索関心度が高まり、2月末にはピークを迎えた。その後は少し下がってきたものの、これらのワードに対する関心は続いている。
深刻なコロナ禍でも恋人同士のセックスは諦められず、その代わりにより安全なモーテル探しに尽力したわけだ。