新型コロナウイルスの影響でアパレル業界は苦境に立たされている。だが、韓国の主要デパートでは、特定の売り場だけが大きく売り上げを伸ばした。いったい何が起きているのか。経営戦略コンサルタントのキム・ヨンソプ氏がリポートする――。

※本稿は、キム・ヨンソプ、渡辺麻土香訳『アンコンタクト 非接触の経済学』(小学館)の一部を再編集したものです。

スーツとシャツ
写真=iStock.com/Grosescu Alberto Mihai
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「似た者同士」が集まるコロナ禍の社会

アンコンタクト社会の人間関係において最も重要なのは「似た者同士」だ。安全が確認され、お互いに似たようなレベルの志向を持つ人同士の関係が深まる。いわゆる「内輪」が強化されるのである。これまでは知識人や芸術家らを中心に、または富裕層を中心に、似た者同士が集まってきた。

前者がいわゆるサロン文化、ヒップスター文化を作ったとすれば、後者は上流階級のプライベートVIP文化を作っている。デパートやホテル、ブランド品業界がVIPのためのパーソナル・ショッパー・サービスやプライベートサービスを提供しているのもこのような理由からであり、上流階級の会員制社交クラブが広まったのも同じ理由からだ。

私たちはすでに富や地位、個性や志向によって閉鎖された人間関係を維持する文化をもっていた。これが新型コロナウイルスによってさらに広がったのだ。混雑を嫌い、限られた人のみ出入りすることができる個室やプライベートルームなど、閉鎖・隔離された空間が好まれた。そこに不安が生んだ排他性が加わることで、すでに拡大しつつあったプライベートサービスにチャンスが訪れたわけだ。「プライベート&プレミアム」は内輪を作る最も効果的なバリアである。

ブランド品店は比較的無事だった

新型コロナウイルスの被害を免れた分野の一つが、高級デパートとブランド品のプライベートサービスである。被害どころか、パーソナル・ショッパーの予約率はさらに高くなったそうだ。デパートでは、年間購入金額によってVIP等級を付与された客に対し、彼らのみが出入りできるVIPスペースを用意し、製品を薦めるパーソナル・ショッパー・サービスを提供する。

当然、誰もが出入りするわけではない彼らだけの閉鎖された空間である上、消毒や防疫といった安全管理も徹底されている。財力があれば、不安がある時期こそ、こうした場所でのショッピングを好むはずだ。

ブランド品業界も、VIP顧客を外部の人と出くわさずに済む専用エレベーターのあるホテルのペントハウスや高級展示スペースに招待し、VIP顧客同士も空間内での動線が重ならないように配慮している。これは新型コロナウイルスとは関係なく以前から行ってきたサービスだ。

かつてデパートでは、営業時間終了後にVIP顧客だけを招いて買い物をさせるというイベントまで行っていた。このようにプライバシーとセキュリティを守るために使われていた閉鎖された買い物空間には、新型コロナウイルスの影響で防疫も加わることになった。コロナによる休業や営業縮小でデパート全体の売上は大きな打撃を受けたが、ブランド品店は相対的に無事であった。