韓国の3大デパートで何が起きていたか

2020年2月1日~3月15日までの新世界百貨店におけるブランド品の売上現況を見ると、店頭での売上は前年同期比14%、オンライン売上では前年同期比で41%伸びている。デパート全体の売上と来店客数が大幅に減少したにもかかわらず、ブランド品売り場の売上が増えたというのは、デパートのプライベートサービスが善戦したという証拠だ。実際に新世界百貨店のVIP会員は、当該期間中に平均4.8回来店している。一般顧客の同期間の平均来店回数2回よりはるかに多い数字だ。当該期間中の来店回数の減少幅も一般顧客47%に対し、VIP会員は20%と相対的に少なかった。

コロナが拡散していた時期でも、VIP会員が相対的にデパートを訪れることができたのは、防疫と安全に対する信頼があったからだ。デパートが管理を一層徹底していたからである。現代百貨店の同期間におけるブランド品売り場の売上は前年同期比0.7%増、オンライン売上は97%増であった。ロッテ百貨店では前年同期比マイナス7.9%と、ビッグ3の中では唯一減少しているが、オンラインでの売上は22%伸びている。オフラインの売上では明暗が分かれたが、オンライン売上では一様に満足を得られたかたちだ。

新世界百貨店がロッテ百貨店や現代百貨店に比べて店舗での売上増加が目立つのは、ブランド品売り場の多さと休業日数の少なさによる。ロッテ百貨店は2020年2月1日~3月15日の期間中、感染者の来店によって全国16店舗で計23日間休業した。新世界百貨店では5店舗、現代百貨店では3店舗のみが感染者の来店で休業している。

A5ランク以上、霜降り牛肉がどんどん売れる

現代百貨店では、新型コロナウイルス拡散後、狎鴎亭本店の1++等級〔訳者注:日本でいうA5ランク〕以上の韓国産牛の売上が前年比30%以上増加したそうだ。1++等級の国産牛の中でも最もマーブリング点数〔訳者注:いわゆる「霜降り」の度合いを示す〕が高い「マーブリングスコアNo.9ロース」に至っては、金曜日に入荷すると土曜日の午前中に売り切れてしまうほどだという。現代百貨店の顧客データ分析結果によると、このロースの売上の80%以上がVIP会員によるものだった。だからこそ、デパートはVIP顧客の誘致に積極的になるのだ。

日本の焼肉
写真=iStock.com/taa22
※写真はイメージです

ロッテ百貨店のVIP制度(MVG)は4等級に分けられており、そのうち最も低い等級MVG-Aceでも、年間2000万ウォン(180万円)以上(一部の店舗では1800万ウォン以上)使わなければならない。MVG-Crownでは4000万ウォン以上、MVG-Prestigeでは6000万ウォン以上、LENITHでは1億ウォン以上だ。これに加えて2019年からは800万ウォン以上のVIP+を新設し、20~30代を誘致している。新世界百貨店でも年間400万ウォン以上使えばVIP待遇を受けられる。VIP級顧客の65%は20~30代だ。